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天歌の再起を願う 11月2日~SFと童貞と落語:笑福亭羽光

吉原馬雀

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落語界のみならず演芸界に激震を走らせた、元・三遊亭天歌さんによるパワハラ告発。様々な想いが渦巻く中、元・三遊亭天歌さんと親しくされておられる笑福亭羽光師匠がご自身の考えをまとめてくださいました。なぜこの文章を出されるのか、これからどうしていきたいのか。

笑福亭羽光師匠の想い、受け止めてください。

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天歌が落語家として再起出来る日を願う 11月2日

2022年10月12日、落語協会二つ目、三遊亭天歌が自らの師匠をパワハラで告発した記事が、フライデーデジタルに掲載された。

演芸界に激震が走った。

天歌は、神田連雀亭番頭だった頃、同じ番頭仲間だったし、協会は違えど割と親しくしていたので、概ねの事は噂で聞いていたが、驚きは隠せなかった。

地元宮崎県の落語会に呼んで頂き、一緒に過ごす時間が多かった。二人で宮崎県内のあちこちをドライブしながら、色んな話をしたが、彼は決して自らの師匠に対する愚痴をもらさなかった。

記事を読んで、目を覆いたくなるようなパワハラが行われていた事を知り、彼が寡黙に誰にも相談せずに堪えていたことを知る。

僕は、かなり迷った末、天歌の告白記事をリツイートした。

リツイートは、勇気がいる。

というのは、天歌は、自らの師匠だけでなく、落語協会の体制や落語協会会長に対しても、パワハラに対しての対策の不手際を指摘していたのだ。

つまり、リツイートするという事は、天歌の意見を広めようとする意志を明確にするからだ。

僕は落語協会から仕事を貰った事もある。会長にゲストで来ていただいた事もある。落語協会の人に、嫌われないだろうか、鹿児島県で仕事はこれから出来ないだろうな……そういう思いが脳裏をめぐる。

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噺家は、この件に関して意見を表明しにくいと思う。パワハラはいけない事だし、天歌の告発は世間に広められるべきである。

しかし、自分はどうなんだ……という問いが存在する。

上下関係のある演芸界では、皆多かれ少なかれパワハラやセクハラに該当する行為をした事はあるだろう。

僕は、楽屋でよく下ネタを言ってはしゃいでいた。というか、鶴光の弟子という自身のキャラもあるが、芸人同士で飲みに行く時はほぼ必ず下ネタを話す。

その時に、女性芸人が混じっている場合もある。また女性芸人に直接エロい事を言った事もある。もし、その時、女性芸人が嫌な気がしたら、僕の行為はセクハラに当たるだろう。

自分自身は大丈夫だろうか、セクハラやパワハラを一度もした事無いと言い切れるのだろうか、また内情のよく知らない事を天歌側の意見を聴いただけで、全面的に支持して良いだろうか……と色んな思惑があったが、僕は天歌のツイートをリツイートし、公に天歌を支持する旨を自分の言葉で表明した。

それは、あまりにも天歌が孤独に戦っているように見えたから。あまりにも天歌が、大きな存在を相手に戦っているように見えたから。

そして何よりも天歌は、本当に良い人間だから。

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鶴瓶師匠のラジオで、昔よく松鶴師匠の事を話されてるのを聴いて、弟子入りって怖いパワハラなんて当たり前の世界なんやな~って思っていた。実際入門して、師匠鶴光から思い出話を聞いても、やはり、昔はどの一門でも多かれ少なかれ殴ったりはあったそうだ。

しかし、僕自身は師匠から暴力どころか、一度も声を荒げて怒られた事もない。注意レベルだ。でも何とか落語家として真打になりやっていけている。ほとんどの落語家が師匠から暴力をうけた事が無いまま真打になっている。

指導の方法として暴力が必要……というのは間違いだと思う。

ただ、弟子の教育方針はそれぞれの師匠によって違うから、どの指導方針が正しいとかは、はっきりわからない。僕には師匠鶴光の教育方針があっていた…というだけかもしれない。

テレビやネットでも、過激な表現や下ネタ、差別ネタは規制が厳しくなった。僕が学生の頃は、地上波でもかなりきわどい事をしていたが、最近は、芸人のテレビでのネタもだいぶ変わったと思う。すぐ苦情が来るし、ツイッターの発言もすぐ炎上するし。

徒弟制度もそうなのかもしれない。昔は弟子は絶対服従でパワハラもセクハラもまかり通っていて、その体制も含めてお客様が魅力を感じた世界だった。

お客様は非現実を観に行く。破天荒な、現実の世界では通用しないルールで生きている芸人達を木戸銭を払って観に行っていた。

が、時代の流れで今は、世間も変わってきたのかもしれない。

我々落語家も、古い良い部分は残して、古い悪い体質は改善して、アップデートしていく時代になったのだと思う。

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