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【取材記事】第26回十条らくご 春風亭弁橋会「弁橋が勉強する会11」レポート〜「幸せのスパイラル」は十条から

取材記事

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 東京・北区にある「十条銀座商店街」は、池袋駅からJR埼京線で2駅、十条駅北口を出てすぐにある、アーケードが特徴的な商店街です。歴史は古く、始まりは明治30年代後半ごろ。第二次世界大戦を経て、昭和50年にアーケードとカラー塗装が整備、平成10年にはアーケードの改修が行われ、現在に至っています。

2階へつながる階段を上がると、そこが会場

 テレビや雑誌などでもよく見る十条銀座商店街。その中にある「A1肉骨茶(エーワンバクテー)」というマレーシア料理のお店で落語会が開かれていると聞き、「第26回十条らくご 春風亭弁橋会『弁橋が勉強する会11』」へうかがいました。

 春風亭弁橋さんは、2015年に春風亭柳橋師匠に入門。前座を経て、2019年に二ツ目に昇進しました。この日も会のあとに「武田の里・サッカーのまちにらさき親善大使」として、観光大使を務める芸人さんが集まる「シンプー寄席」に出演するなど、大活躍です。

 落語とマレーシア料理と十条のまち……、素敵な取り合わせにお腹いっぱい!の落語会の様子をレポートします。

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落語で「推し活」!?

開場前、ご好意でお客様も一緒に準備をしてくださっていました。めくりも手作り!

 2016年ごろ巻き起こった「プチ席亭」ブーム。落語を取り上げたドラマやマンガが人気を集めたり、初心者でも足を運びやすい「渋谷らくご」が始まったりするなど、若い人へ落語という文化が浸透するとともに、ファンが自分で企画を立て、落語会を開催する文化=「プチ席亭」ブームも広がりをみせました。

 とはいえ、継続するのは難しいもの。そんな中、「十条らくご」は今回で26回目の開催を迎えました。立ち上げから現在まで運営に携わっているカメカワさんは「落語会を開催するのは『推し活』」とおっしゃいます。

 「プチ席亭」という言葉がブームになる前から、噺家さんのファンが落語会を開催することは、「応援」のひとつの方法として存在していました。寄席や落語会に足を運び、落語を聞くだけではない「推し活」です。

 大変なこともあるけれど、「大好きな噺家さんの落語が聞きたい」「噺家さんを応援したい」「もっと噺家さんを知って欲しい」という気持ちが原動力となっているそうです。

 さて今回の『弁橋が勉強する会』、まずは『置泥(おきどろ)』から。

 泥棒の噺は「お客様の心を盗む」ことから縁起がいいとされているそうです。筆者もすっかり、弁橋さんに心を奪われてしまいました……!

 ある夜、長屋へ入った泥棒。ところが、その家はずいぶん汚れていて、金目のものもなさそうです。長屋に住む男が「殺してくれ」と言うから泥棒はびっくり。「死んだらいけない」と諭すうち、泥棒の持っていたお金が――。

 本来は悪人であるはずの泥棒も、落語の中ではちょっと間の抜けた人物として描かれがちですが、弁橋さんの演じる泥棒も例に漏れず。

 最終的にどうなってしまうのか展開は分かるのに、想像を超えるお人好しぶりで大笑い!でした。

 その他、弁橋さん曰くの「新作の供養」も2つ。そのうちの1つは、お客様が「さっきの好き!」と高座の弁橋さんに語りかけるほどでした。「このやり取りが十条なんです」とにっこりの弁橋さんに、いかに弁橋さんが十条というまちに愛されているかを感じます。

 仲入り後は、地元・韮崎で行われた会で演じるなどしながら、「ブラッシュアップの途中」という演目を!

 「お客さんの前で試していいのかな……」とおっしゃっていましたが、弁橋さんを応援しているお客さんにとって、成長の瞬間に立ち会えるのは格別の喜びなのではないでしょうか。

 テンポよく場面や人物が切り替わる噺ですが、声色や話し方を大きく変えているわけではなく、場面や人物の「空気」の違いを表現している印象です。

 また、マクラと本編のグラデーションが絶妙で、ふと気づくと本編に入っているのがとても心地よく感じられました。そちらも、空気を操っているよう。

 演じたあと、「ここはもうちょっと足そうと思います」「ここは引いてみようかな」など、お客さんの反応を見ながら検討が行われるのも、最大16名というこの規模ならでは。
(※本来は最大25席ですが、会場が飲食店ということもあり、席数を減らしての開催となっています)

 楽しさをシェアしたいところですが……、年明け最初の十条らくごで再度検討を重ねるかも?とのことでしたので、ぜひ生でご覧ください!

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応援と恩返しの幸せなスパイラル

年末の日曜日ということもあり、たくさんの人で賑わっていた商店街

 「十条らくご」立ち上げのきっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染症。寄席やホール落語、落語会などが軒並み中止となり、Twitterで窮状を訴えた弁橋さん。そこへ声をかけたのがカメカワさんです。ご自身がご覧になるはずだった会も中止になり、その払い戻しで「弁橋さんの落語が聴きたい!」とお願いしました。

 はじめは、「カラオケボックスで聴けるだけでも……」と話していたお2人。でも、「こんなときだからこそ、お世話になっている十条の方へ恩返しがしたい」と、十条の方やそれ以外の地域にお住まいの方も呼んでの会として「十条らくご」が始まりました。

 山梨県・韮崎市出身の弁橋さんは、東京にいらしてすぐから約8年間、十条にお住まいです。新型コロナウイルス感染症の感染拡大初期も、商店街のたくさんのお店から「ごはん食べられてるの?」「うちに食べにいらっしゃい」と声をかけていただき、本当にありがたかったのだそう。

 弁橋さんが会場のひとつとしてカメカワさんに紹介したのが、そんなふうにお世話になったお店のひとつでもあるA1バクテーでした。店名にもなっているバクテー=「肉骨茶」は、マレーシアなどで食べられている、骨付き肉をスパイスたっぷりのスープで煮込んだ料理のこと。

 最初の「十条らくご」は2020年3月開催。Twitterのみでたった1週間の告知、それでも多くの方が来てくださったのだそうです。

お店の外には当日の看板の他に、今後の会のお知らせも

 一度だけの予定が、以降は3か月に1回の開催に。さらに知名度を上げるために、1か月に1回の開催にした上でメンバーを固定し、弁橋さんと三遊亭遊喜師匠、春風亭昇吾さん(現在は春風亭かけ橋さん)、三遊亭花金さんの組み合わせで3か月ごと、三遊亭小笑師匠・春風亭昇吾さん、立川幸之進さん・瀧川鯉白さんの組み合わせで半年ごとに回を重ね、不定期には柳亭信楽さんなどの噺家さんも出演しています。

 コロナ禍で苦しむ芸人さんを「応援したい」と会を企画するお客さん。住んでいるまちへの「恩返しがしたい」と落語を演じる芸人さん。笑顔で帰っていくお客さんは、芸人さんをまた応援したくなる――。

 今後は、落語会を開催したい方の相談を受けたり、そうした方を応援したりしたいそう。そのために、貸し出し用の高座セットも準備があるとのこと!
 「幸せのスパイラル」は、まだまだ続いていきそうです。

 次回は、柳亭信楽さんと春風亭弁橋さんによる「のびしろの会」。
 ぜひ、ご一緒に楽しみませんか?

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次回のお知らせ

新春 十条らくご「のびしろの会」2人DE落語②
2023年1月7日(土)
開場:14:40 開演:15:00
木戸:1500円
会場:A1バクテー2階(東京都北区上十条2-30-9 青木ビル)

※体調を整え、マスク着用にてご来場・ご観覧ください。
※入場時の手指消毒と検温にご協力ください。
※飲食店での開催のため、本来は定員25名のところ、引き続き最大16名での開催となります。ご了承ください。
詳しくは、Twitter(@jujo_rakugo)をご覧ください。

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