【取材記事】第93回ヨセゲー「リクエスト大会」レポート

　毎月、東京・神保町にある「らくごカフェ」で行われている「ヨセゲー」。3月2日は「リクエスト大会」が開催されました。

　1月のヨセゲーでは投票用紙を配付、以降はTwitterで演目のリクエストを募っていました。1月の会場では、お客様が迷いながら投票用紙に記入していらした姿が印象的でした。

　出演は、三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・笑福亭里光師匠・柳亭芝楽師匠です。

　さて、選ばれたのはどの演目だったのでしょうか？

気になる投票の結果は？

　今回の「ヨセゲー」は春風亭伝枝師匠から。3月1日より池袋演芸場・夜の部にて主任を務められていたこともあり、最初の登場となりました。
　先月の三遊亭遊喜師匠に引き続き、らくごカフェから池袋演芸場へと移動されることとなりましたが、たっぷりと『湯屋番』を演じてくださいました。

　居候している家の1階から2階、2階から1階、奉公に出た湯屋の風呂から番台、――と次々行われる場面転換がスピーディーで、みるみるうちに若旦那の妄想ワールドに惹き込まれます。湯屋のお客さんになって、一緒に番台を見上げているような雰囲気の客席です。

　伝枝師匠が「ヨセゲー」での出番を終えたのが7時半に近いころ。次に登場の笑福亭里光師匠は内心ドキドキしていらしたみたいです。笑　そうそう、先月「着いたとたんに出番になる」とおっしゃっていましたよね。

【取材記事】第92回ヨセゲー「暖まりたい噺」レポート

　神保町・らくごカフェでは、今月も三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・笑福亭里光師匠・柳亭芝楽師匠による「ヨセゲー」が開催されました。　今月のテーマは「暖まりたい噺」。会の行われた2月16日は、テーマにぴったりの寒い1日でした。さて、...

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　でも、「緊張する間もなく出番だから逆にいいのかも」とも。師匠方のお人柄がうかがえる一幕でした。

　そんな笑福亭里光師匠が演じたのは『お坊主稲川』。もとは講談で、旭堂南鱗先生が多く演じていらっしゃるという演目です。
　以前から、笑福亭鶴光師匠が講談の演目を拝借し、落語として演ずることがあったとか。そのような流れの中で、里光師匠は南鱗先生から直々に習った演目だそうです。

　落語のカテゴリでは「人情噺」にあたるといえそうな『お坊主稲川』。
　相撲の歴史など講談らしい「なるほど！」と、マクラでの鶴光師匠のお話がのちになって効いてくる落語らしい「笑い」の融合が新鮮です。

　後半では、『お坊主稲川』というタイトルの秘密も明かされ、「ほお……」とため息がもれる客席です。今後もぜひ聴いてみたいと思う、落語と講談の素敵な出会いでした。

後半は新作落語からたっぷりと

　仲入り後は、柳亭芝楽師匠。これまでに芝楽師匠が経験したアルバイトのお話から、新作落語『若頭の子守唄』を演じます。

　生後3か月という「若頭」のベビーシッターをするように頼まれた男。お腹が空いて泣き出した「若頭ちゃん」にミルクを作ろうと、引き出しを開けると――。

　その後の展開には、客席からも時折、小さな悲鳴が……！芝楽師匠が天真爛漫に演じれば演じるほど、次から次へと起こる出来事への緊張感が高まります。

　スリリングなストーリーに時間を忘れて没頭しました。

　トリを務めるのは、三遊亭遊喜師匠。『居残り佐平次』を演じます。

　とにかく賢く、弁の立つ佐平次。言っていることは「何が何だかさっぱり分からない」のですが、店の人たちとともに客席もその調子に呑まれていきます。「いのどん」などと呼ばれて、馴染んでしまうのも納得！

　佐平次は居残りを渡世、つまり生業にしているというのですから、これまでにも同じようなやり方でたくさんの人を騙してきたはず。それなのに何だか憎めないのは、落語の登場人物ならではです。遊喜師匠の演じぶりと相まって、らくごカフェにいるお客さんもすっかり佐平次のとりこになっていたようです。

おわりに

「リクエスト大会」、結果はご覧のようになりました。今回、惜しくも選出とはならなかった演目も、今後の参考になさるとのこと。これからの「ヨセゲー」がますます楽しみになりますね。
　
　第93回ヨセゲー「リクエスト大会」は、3月16日（木）までツイキャスでもご覧いただけます。
　次回・第94回ヨセゲーは「リンク落語」。ぜひ、ご一緒に味わいませんか？

　寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。

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