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【取材記事】第92回ヨセゲー「暖まりたい噺」レポート

三遊亭遊喜

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 神保町・らくごカフェでは、今月も三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・笑福亭里光師匠・柳亭芝楽師匠による「ヨセゲー」が開催されました。

 今月のテーマは「暖まりたい噺」。会の行われた2月16日は、テーマにぴったりの寒い1日でした。さて、いったいどんなふうに暖めてくださったのでしょうか?

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少しズルして暖まりたい

 本日のヨセゲーは、三遊亭遊喜師匠『時そば』から。
 寄席つむぎでもご案内の通り、この日から池袋演芸場・夜の部にて主任を務められていた遊喜師匠。
 のちに登場の笑福亭里光師匠が「神保町から池袋までは20分くらいだから、着いたとたんに出番になる」とおっしゃっていましたが、無事にトリを務められたようです。よかった!

 ある夜、二八そばの屋台を呼び止めた男。その男が勘定をごまかすところを見ていた、もう1人の男がいました。自分も同じようにやってみようとするのですが――。

 からくりに気づくまでに何度も何度も「ひとつ、ふたつ、……」とリズミカルに繰り返すさまがユーモラス。

 ちなみに、『時そば』で食べられているそばは「しっぽくそば」。そばと一緒にちくわなどが入った、温かいそばです。確かに、寒い日には身体の中からあたたまりたいですよね。

 遊喜師匠の語りだけで、異なる2つの屋台の2つのそばが目の前に浮かぶような気がするから不思議です。

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心から暖まりたい

 続いては、笑福亭里光師匠の『ラーメン屋』。有崎勉(柳家金語楼)作の新作落語です。

 はからずも「麺が出てくる噺」が続いてしまったと里光師匠。出番の順番を決めてから気がついたそうで、言われてみれば!と膝を打つ客席です。

 老夫婦の営む屋台のラーメン屋にやってきた、年のころ27、8歳くらいの青年。1杯、また1杯と全部で3杯のラーメンを平らげた青年は、手持ちのお金がないことを打ち明け「交番に突き出してくれ」と老夫婦に頼みますが――。

 里光師匠が話し始めてから、「そうか、上方の言葉なんだ」と気がつきました。
『時そば』との「麺つながり」で江戸のまちを想像しながら聞いていましたが、里光師匠が演じるとなれば舞台も上方へ。

 老夫婦と青年のやりとりに、見ているこちらもじわじわと心があたたまります。作りたてのラーメンが、青年の気持ちをほぐしてくれたのかもしれませんね。

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未知の体験で暖まりたい

 仲入り後は、柳亭芝楽師匠『ねぎまの殿様』です。

『ねぎまの殿様』で描かれているのは江戸のまち、しかも本郷から上野広小路という非常に小さな範囲のようすなのですが、現在とそのころの地理や文化の違いなどをたくさんお話しいただきました。
 自分の頭の中にある東京の地図を開いたり、経験と重ねたり――。さらりと語られるとどこかへ流れていってしまう「?(はてな)」を明らかにしながら聞くのは初めての体験です。

 ある雪の日、向島へお忍びで雪見に出かけた殿様。途中、上野広小路の煮売り屋で、ねぎとマグロでできた鍋料理「ねぎま」に出会います。好奇心旺盛な殿様は、それをたいそう気に入るのですが――。

 殿様が焦がれたねぎまを食べたときの、満足げな笑顔といったら……!見ているこちらまで一緒になって食べているような、暖まるような表情でしたよ。

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ホントは布団で暖まりたい

 トリを務めるのは春風亭伝枝師匠。
 古書店街を有する神保町ならではの「古本屋さんでちょっと得をした話」から『夢金』を演じます。

 雪の降る夜、欲深い船頭の熊は、船宿の2階で「金が欲しい」と寝言を言っています。そこへ、ひと癖ありそうな様子の男と女がやってきて、船を出してくれと頼むのですが――。

 さてこの日、伝枝師匠はマクラのあとも羽織を脱がずにいました。ところが、雪の降るなか舟をこいでいた船頭が、笠と蓑を脱ぐ場面。積もった雪を払ってから脱ぐその仕草に、はっとなりました。羽織を船頭の着る蓑に見立てるという演出だったのですね。

 雪の降りしきる情景を描写する演出は真に迫るものがあり、ふだんはシャツ1枚でも十分に暖かいらくごカフェが、まるで冬の川の上のように感じられます。

 落語には「聴く」だけでなく「見る」楽しさもあることを、改めて感じた一席でした。

おわりに

 東京に雪が降ったのは、この会の約1週間前。次の日は雪がすっかりとけるほど暖かく、ヨセゲーの日はどんな陽気になるかな?と天気予報をチェックしていました。
 テーマがあるからこそ、そんなふうに会までの時間を過ごせるのも「ヨセゲー」の魅力です。

 第92回ヨセゲー「暖まりたい噺」は、3月2日(木)までツイキャスでもご覧いただけます。
 次回・第93回ヨセゲーは「リクエスト大会」。1月のヨセゲーで投票用紙を配付するなどして募っていたリクエスト。みなさん、真剣に考えながら書き込まれていた姿が印象的でした。いったい、どんな噺が飛び出すのでしょうか?
 ぜひ、ご一緒に味わいませんか?

 なお、Twitterでは現在投票受付中!下記Twitterのツリーをご覧ください。

ヨセゲー #93【リクエスト大会】
2023年3月2日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2000円 前売:1800円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/203250

ツイキャス落語会 ヨセゲー#92【暖まりたい噺】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/203246
3月2日(木)までご覧になれます。

 寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。

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