高校野球で度々話題になる球数制限。一人のエースに頼り切るのではなく、複数の投手で試合を回していくことの是非は、議論の渦を巻き起こします。自身が高校球児でもあったマグナム小林先生の意見は、プロ野球を開幕を目にしてからこう思われたのだそう。
勝ちを取りにいくスポーツの野球は、人材育成の側面も持っています。金の卵を割らないために何をすべきなのでしょうか。マグナム小林先生からの提言です。じっくりお読みください。
選抜高校野球、そしてプロ野球開幕を見て
選抜高校野球は山梨学院が山梨県勢初優勝で幕を閉じた。関東圏にいて、山梨がそんなにレベルが低いとは思ってなかったので、初優勝というのは意外な感じ。過去には東海大甲府などの強豪もあったから。
エースの林君がほとんど投げていた。球数制限など言われる昨今では珍しいケースだ。球数制限の議論の時に素人は、簡単に投手を作ればいいじゃないかと言うけど、そんなに容易な事ではない。あの大阪桐蔭でも前田君以外の投手はあまり活躍出来なかった。
投手が試合で安定してストライクが取れるようになるまでにどれだけ時間がかかるか。プロですら、藤浪のように制球難の投手がいるくらいだから。ストライクが入らなければ、試合にならない。そんなレベルの投手を作っても意味がない。現段階では、投手経験のある指導者でもなかなか育てるのが難しい。ましてや、投手経験のない指導者ではほぼ無理な状態。
私も連投を良しとはしないが、準々決勝以降はせめて一日おきにすべきだと思う。今年も準決勝、決勝は空きがなかった。
多数投手制の弊害がもう一つ。目玉になる投手がここ数年出なくなった。高校レベルでは圧倒してしまうような投手がいない。松坂やマー君レベルの投手というのは10年20年に一人の逸材ではあるけど、そういう投手を打つために努力する事で高校野球全体のレベルが上がる。そのいい例が松坂世代だろう。
ただ、投手としての完成が以前より遅くなったとも言える。今までは高校3年生での完成を目指していたのが、今は素質のある選手なら、プロに入って4年目くらいでの完成を目指している感じ。山本由伸や佐々木朗希などがいい例。結果論ではあるが、佐々木朗希を高校時代に無理をさせなくて良かったと思うし、彼の活躍を喜んでいるのは、当時の大船渡高校の監督であり、選手たちだろう。佐々木が活躍しなければ、彼らの思いは浮かばれなかった。
球界全体を見ると、WBCの決勝での活躍でも分かるように、若い投手の育て方のノウハウは出来つつあると思う。その育て方の、アマチュアを含めた球界全体への共有と、そうして育てられた素晴らしい投手たちを打つ打者の育成ノウハウの確立が今後求められる。打者の方はまだまだ確立されたとは言えない。村上のような打者が何人も出てきた時に、本当の意味での日本球界のレベルアップと言える。