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【取材記事】第99回ヨセゲー「鯉枝落語スペシャル」レポート

三遊亭遊喜

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 今月も、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・笑福亭里光師匠・柳亭芝楽師匠、そして春風亭鯉枝師匠による「ヨセゲー」が開催されました。

 9月7日に行われたのは「鯉枝落語スペシャル」。今回演じられたのは、なんと!すべて鯉枝師匠の新作落語です。

 独創的な作風で知られる、鯉枝師匠の新作落語。作者以外が演じることで、どのような化学反応が生まれるのでしょうか?どなたがどの噺を演ずるかは、当日のお楽しみということもあり、期待が高まります。

 さていったい、どんな会になったのでしょうか。さっそく見ていきましょう!

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「鯉枝マニア」が集まった!?

 最初に登場したのは、三遊亭遊喜師匠。ヨセゲーののち、新宿末廣亭にて夜の部主任を務められる活躍ぶりです!

「鯉枝スペシャル」に集まった「鯉枝マニア」な面々に、戦々恐々(!?)な遊喜師匠。「どんな噺か、分かってるんですよね……?」の問いに、大きく頷く客席です。

 さて冒頭、「えー、なになに……」と本編に入るやいなや、大きな笑いが沸き起こります。「鯉枝落語」を聴いているのに、語っているのは遊喜師匠。にも関わらず、噺のスタート地点には鯉枝師匠の雰囲気が残っていて……。なんだか不思議な感覚です。

 遊喜師匠が演じたのは、『実践!自動車教習所』。

自動車教習所にやってきた大西。ところが、その路上教習はあまりにも実践とはかけ離れているようで――。

 噺が進むにつれ、「遊喜師匠の『実践!自動車教習所』」になっていることが分かってきます。生徒・大西と教官・渡辺の演じ分けや会話の間など、しゃきしゃきとした語り口が持ち味の「遊喜師匠らしさ」をあらためて実感した一席でした。

 続いては、笑福亭里光師匠。

 里光師匠といえば!のマクラからスタートする高座ですが、客席の雰囲気や心持ちが普段のヨセゲーとは少し違うので、不思議な気分に。

 演じられたのは、『おのぼりさん』です。

関西の田舎から上京してきた大西。上野駅で友人・渡辺と再会し、東京巡りに出かけます。

『おのぼりさん』は、北海道の言葉と東京の言葉でそれぞれに語る様子が印象的な噺ですが、里光師匠はそれを全て関西の言葉に置き換えて演じられました。

 それゆえ、「新幹線で来い」に可笑しさがひとつ加わったり、東京ディズニーランドについての話題と対立する存在として盛り込まれたユニバーサル・スタジオ・ジャパンの話が、原作とはまた異なった膨らみ方を見せたりして、ひと味違う面白さ!

 喫茶店で交わされる、渡辺が抱いていた夢の話は、空気が一瞬で変わり胸に染みるものがあります。間断なく続く2人の会話の応酬の隙間にふっと寂しさが入り込むような演じぶり、そして畳み掛けるように起こる笑い。

 関西の言葉や勢いのいいやりとりなど、里光師匠らしさたっぷりの『おのぼりさん』に、大きな拍手が送られていました。

 仲入り前は、柳亭芝楽師匠。

 英語ができるようになりたい、できたら出世できるのになあ、今の子どもは小学校から授業で英語があるのに、……と英語にまつわるお話から、『ディスイズアペン』を演じます。

ある中学校の教室、初めての英語の授業のひとコマ。

 芝楽師匠演ずる『ディスイズアペン』は、どちらかといえば原作に近い雰囲気でお話が進みます。朴訥とした語り口に、芝楽師匠らしい中学生の純朴な様子が加わって、聴く人が「こんな授業あったなあ」「こんな同級生いたなあ」とそれぞれの経験を想起させるよう。

 ところが、教科書が「感嘆文」の項目に入ったところで、空気が一変!

 身ぶり手ぶりたっぷりに演じる芝楽師匠、次の例文に行く前にスッと空気を変える緩急に引き込まれました。

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鯉枝師匠の感想は……?

 仲入り後は、春風亭鯉枝師匠から。

 ここまで3人がご自身の新作落語を演じられるのを聴いて、「小っ恥ずかしい……」と照れくさそうな鯉枝師匠。
 でも、原作に忠実な人が1人もいないところには、「さすが落語家!と思った」とも。笑 原作へのリスペクトでもあり、ひと癖もふた癖もある(!?)ヨセゲーメンバーの矜持でもあるといえそうです。

 マクラは、後楽園の場外馬券売場に行ったときのお話。お財布に入っていた2セント硬貨をめぐるあれこれから、続けて「この間、本当にあったことなんですけど……」。え!?ということは、さっきの2セントの話は……!?

 すっかり鯉枝ワールドに迷い込む客席です。

 演じたのは、『アパート探し』。

破格の条件でアパートを探す男。トイレがなかったり、風呂がなかったり、屋根がなかったり!?で、なかなか思い通りの物件は見つからず――。

 以前から演じられている『アパート探し』ですが、この日の一席はそれを大幅に書き換えたもの。作者であり、演者でもある鯉枝師匠が、バージョンアップとパワーアップを重ねられていることに敬服です。

 遊喜師匠と同じく、「えー、なになに……」を起点に始まった一席。当たり前のことかもしれませんが、今回はそこで笑いが起こるわけではありません。
「えー、なになに……」や「はい」といった短い言葉にまで積み重ねてきた味わいを感じ、細部に「鯉枝師匠らしさ」が宿っているのだと新たな気づきのあった瞬間でした。

 トリを努めたのは、春風亭伝枝師匠です。

 今回のメンバーの中で唯一、鯉枝師匠と同じ一門に所属している伝枝師匠。知る人ぞ知る前座・二ツ目時代のお話や、一門の「オリジナル・フォー」と呼ばれる4人のお話など、貴重なエピソードをうかがうことができました。ぜひ、配信をご覧ください。

 そんな一門を率いる鯉昇師匠、実はギャンブルがお嫌いとのこと。翻ってその弟子たちは……、というお話から、『府中馬券師専門学校』を演じます。

「府中馬券師専門学校」にやってきた、競馬に疎い大西。強面の先生のもと、競馬のイロハを学びます。

 伝枝師匠からは、鯉枝師匠の落語に登場する「渡辺」と「大西」についてもお話がありました。「渡辺」は三遊亭遊喜師匠の本名から、「大西」は瀧川鯉太師匠の本名から付けられ、古典落語でいうところの「八っつぁん」「熊さん」に相当します。これには、客席からも感嘆のため息が。

 新作落語が演じつづけられ、やがて古典落語になっていくーー。その始まりに立ち会っているのだと、あらためて感じます。

 ギャンブル好きの多い鯉昇一門にあって、ご自身はのめり込むほどでない……、という伝枝師匠。
 どちらかといえば大西に近い立場の伝枝師匠が馬券師専門学校の先生を演じる様子には、どこか可笑しみが漂います。

 専門学校のクラスが上がっていくさまや、「枠連」「馬単」「三連単」など競馬用語を一気にまくしたてるさま、クライマックスの競馬場でのレースでのさまなど、鯉枝師匠とはまた違うたたみかけるような調子が、臨場感たっぷりの印象的な一席でした。

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振り返りトークで〆!

 終演後は、今回の振り返りトークです。

 今回のヨセゲーを開催するにあたり、それぞれ鯉枝師匠から噺の原稿が書かれたノートを受け取ったというみなさん。
 芝楽師匠は「きちんと返さないと」と思ってコピーを取ったそうですが、里光師匠が「あれ、いいノートに書き直してくれたんだよ」。

 そう、鯉枝師匠はそれぞれ、ノートに原稿を書き直し、それを渡してくださっていたのです!
 これには、客席からも感動と感嘆の声が。「いやいや……」と照れる鯉枝師匠でした(写真)。

 実は今回、音声データではなく原稿で受け取ったことには、ある理由があったことも明かされました。その場にいた全員が納得したであろうその理由は、どうぞ配信でご覧ください!

 今回は登場しなかった噺やまだ見ぬ新作など、これからの春風亭鯉枝師匠の活躍が、ますます楽しみになった会でした。

 なお次回、ヨセゲーに鯉枝師匠が出演を予定されているのは、12月『年末大反省会』です。いったい、どんな噺が聴けるのでしょうか。こちらも楽しみですね。

 第99回ヨセゲー「鯉枝落語スペシャル」は、9月21日(木)までツイキャスでもご覧いただけます。
 次回・第100回ヨセゲーは「壽百回記念スペシャル」。いよいよ、100回目の節目を迎える「ヨセゲー」。今回は、「百回記念特別顧問」として春風亭柳橋師匠のお名前も……!?
 ぜひ、ご一緒に味わいませんか?

ヨセゲー #100【壽百回記念スペシャル】
2023年10月5日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/260200

ツイキャス落語会 ヨセゲー#99【鯉枝落語スペシャル】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/240878
9月21日(木)までご覧になれます。

 寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。

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