広告

芸人の楽屋-ギャラの話~日常ドキュメンタリー:三遊亭はらしょう

三遊亭はらしょう

▲お問い合わせはこちらから▲
【PR】
▽電子帳簿保護法の準備はお済みですか?▽

芸人にとってギャラは大切なもの。生活の糧であると同時に、自分の今の価値をはかるものでもあります。楽屋で顔を合わせると、誰とはなしにギャラの話が。そんな出来事を、三遊亭はらしょうさんにつづっていただきました。

さてさて、三遊亭はらしょうさんたちがギャラの多さを比べた相手は誰でしょう?今回も軽快にお話しは進められます。お楽しみください!

広告

芸人の楽屋-ギャラの話

「ああ、売れっ子は沢山ギャラが貰えていいなぁ~」
今日も売れっ子ではない芸人たちがいる楽屋からそんな声が聞こえてくる。

ここで分かって頂きたいのが、「売れてない芸人」ではなくて「売れっ子ではない芸人」という言い方である。売れてない芸人、というのは今日のライブにすら出演できないぐらいのレベルのことで、売れっ子ではない芸人、というのは今日のライブにはかろうじて出演できるレベルということだ。

芸人というのは、常に前進していると信じたい為に、今いる状態を以前よりはいいという魔法を自らかけることで、なんとかやっていくことができる。
もし、魔法をかけなければ、一番最初に芸人になろうと思った時点で他にもいい仕事があることに気づいてしまう。

気づいてしまって夢を見ることをあっさりと諦めてしまい、そうなるとなんだか人生楽しくなさそうなので朝から晩まで魔法をかけ続ける。

そして、現在に至る。

と、そんな、今日のライブに出演できるレベルの芸人たちのうちの一人が俺である。
「今日のギャラは1000円か~。でも出るだけ良かった」

と呟いていると、隣にいた芸人のSは

「俺は交通費引いたら、手取り200円だよ~」

21世紀とは思えない会話だ。

「でも200円貰えるだけでもありがたいよ、前は、1円も出ないのはしょっちゅうだったもんな、今、俺は当時の200倍も稼いでいる!」

早速、魔法をかけ始めた。

そんな下らない話をしていると誰かがネットの記事で読んだのか
「おい、すげぇよ、トムクルーズのギャラって映画一本で100億円だよ」
いきなりスケールのでかい話が出てくる。

一体、誰に嫉妬しているんだ。

「100億円ってどのくらいなんだ、100円置くんじゃなくて100億円か」
今年、芸歴20年の芸人Kが100円玉を出して手のひらに置いた。だが、それが全財産だったことに気づくと、急いで財布に戻した。


「おい、ジュリアロバーツは映画に6分出ただけで3億円だって!」
「えー、今日、俺たち15分ネタやって1000円だよ、ジュリアロバーツだったらいくらになるんだ」
「いや、ジュリアロバーツは芸人のライブに出ないだろ」
「仮に出たとして、1分で5000万円だから」

と芸人Sがスマホの電卓で計算を始めた。

「分かりました、ジュリアロバーツが今日のライブに出たら、ギャラは7億5000万円です」
「まじかよ!劇場買えるじゃん」
「ちなみに、ジュリアロバーツの1秒のギャラは83万3333円です」
「そんなの、ジュリアロバーツですって、自己紹介するまでに、1秒たってるじゃねぇか!」

スケールの大きな話をしながら、いつかは俺たちもそんな日がやってくるさと、すぐにみんなで魔法をかけた。

だが、芸人Kが再び100円玉を出して手のひらに置いた為、すぐに魔法はとけた。

更新の励みになります。ご支援のほどをよろしくお願いいたします