三遊亭はらしょうさんの不思議な日々をつづったエッセイも、今回で第10回め。さて、記念すべき回のテーマは「アル」です。さて、「アル」とは何の「アル」なのでしょうか?
ステレオ化された言語の面白さに、三遊亭はらしょうさんのスパイスが加わればこんなにも奥深く!あなたは「アル」とは、なんでアルと思われますか?
「アル」とは、なんでアルか?
昔から、漫画やドラマなどで、中国人が登場すると、必ず語尾に、アルがつくのはどういう意味でアルのか?
中華料理屋の店員が「いらっしゃいませアル」と言っているが、そんなことを日常では一度も聞いたことがない。
このアルは一体なんでアルのか?
まず、考えれるのは、数字でアル。
中国語でアルとは、イー、アル、サン、スーという数字に数えられ、2の意味を表す。
もし、そのアルでアルなら、日本にいる中国人は、語尾に、2をつけていることになるのでアル。
「いらっしゃいませアル」の場合なら、「いらっしゃいませ2」と言っているのでアル。
読み方としては、「いらっしゃいませ、に」であるが、「いらっしゃいませ、ツー」の方が、語呂はよい。
だが、そうなると、英語になってしまうのでアル。奇妙に可笑しな話でアル。
いらっしゃいませのあとに、もし2をつけるなら、それは、2名様が来た時でアル。
それなのに、客が1名様でも、アル、というのは滑稽でアル。
という訳で、これは数字の意味ではないと、直ちにその説は消えるのでアル。
中華屋の店員で考えるから、難しいのでアルのかもしれない。
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悪役アルでは如何か。
どういう訳だか、古いアクションものに登場する中国人の悪役はアルを多様している。
「ふふふ、やっと見つけたアル」「もう逃がさないアル」「命がおしければ、言うことをきくアル」「そ、その手があったとは、完全に私の負けでアル」「さらばでアル」
アルを空気のように吐きながら、最後は港などに沈み、死んで散って行くのでアル。
立ち向かう正義のヒーローは、こうも毎回、相手がアルというのなら、その、アル分だけの時間は言葉を言いきっていないゆえ、「ふふふ、やっと見つけたア・・・」と、その隙をついて攻撃を仕掛ければ、早く勝負がつくのでアルが、そんなことをしたら、盛り上がりにかけてしまうのでアルから、出来る限り物語を引っ張っているのでアル。
中華屋アルも悪役アルも、結局、なんでアルなのか考えても考えても分からず、ただ、ひたすらに、アルが呪いのように押し寄せて来るのみなのでアル。
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さて、ここまで来て、俺はようやくアルを本格的に研究してみたくなった。
研究してみたくなったのでアル、と、ここではあえて、アルとは言わないように書いてみたのだが、ここまで何かと、アル、を使って来たので、突然、語尾にアルがつかないと、服を着てないようで、恥ずかしくなってきさえしているのでアル。
そう書いた所で、落ち着きを取り戻したので、さて、いよいよ、その、アルについてだが、
インターネットを利用するのが、最初の手段としてはよいと思うが、もしかしたら、最後の手段かもしれないのでアル。
つまり、この世にアルを研究している書物などは、きっと存在しないと思うのでアル。
それがアルなら、誰が何の為に書いたのか?
そもそも、そのテーマだけで本が一冊書けるのか?
作者のエネルギーとモチベーションが、摩訶不思議すぎるのでアル。
インターネットを開いた瞬間、もし、アルについて書かれた本が出て来たら驚愕でアル。
「アルの歴史」「アルの壁」「脳内アル命」「ノルウェイのアル」「アルーポッター」段々と、気が狂うて来そうでアル。
そのような書籍は、一切ないと信じよう。
ぐだぐだ言っている間に、早く、アルを調べやがれでアル。
よし、まず、音声で聞いてみよう。
言語を検索するには、まずは自分で喋ってみることでアル。
「中国人のアルとはなんですか?」
俺は芸人でアルから、滑舌には自信がアル。
どれだけ聞きなれない質問でも、グーグルはグルグル回る。
結構、グルグル回る。
そんなにグルグル回られたら、芸人として落ち込むではないか。
不安になったが、滑舌がよかったようで、しばらくすると、いくつもの情報が出て来た。
よかった、これを疑問に思っていた人は俺以外にもいたのでアル。
検索して、まず、驚いたのが、書籍があったことでアル。
まさに、奇跡でアル。
金水敏という方が『コレモ日本語アルカ?異人のことばが生まれるとき』という本を書いていたのでアル。
その他にも、「ダ・ヴィンチ」「ロケットニュース」「ねとらぼ」にも記事になっていたのでアル。
また、YouTubeで李姉妹というユーチューバーが、アルの正体を語る動画もあったのでアル。
俺の予想をはるかに上回る数のアルを、瞬時にして発見できるとは、インターネット恐るべしでアルが、これらの記事を読んでも、アルの由来がいくつか出て来るには出てくるのだが、すべて、「説」としてでしか書かれていないのでアル。
調べてみた結果、ますます気になってしまい、喉にアル小骨が引っかかっているようでアル。
ともかく、少しでもスッキリする為に、金水敏さんの本を買って読んでみるしかなさそうだが、それを読んでも解決しないとしたら、もう、俺は民俗学者のように自らアルのルーツを探しに行かなくてはならない訳でアル。
「ふふふ、やっと見つけたアル」
はて、所で、今回、俺は、アル、を何回言ったのだろうか。
これだけ書いたら、思わず数えそうになったのである。(ここは勿論、平仮名なのである)