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②入門~師匠六代目笑福亭松鶴とわたし:笑福亭鶴光

笑福亭鶴光

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角座の楽屋へ入門志願に訪れた若き日の鶴光師匠。しかし、のちの師匠となる六代目笑福亭松鶴師匠を怒らせてしまいます。その理由は「名前を間違えたから」。これは断られると思ったら、こはいかに。奇跡(?)の大逆転が起き、入門が許されました。

今回は入門を許された理由と、角座の風景についてつづっていただきました。ノスタルジックで何だか切ない、鶴光師匠の思い出話第二幕の開幕です!

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入門

松福亭松鶴独演会

「チラシを作った業者が間違うのやから素人が間違うのは当然。これも何かの縁や、明日からおいで」と言う事になった。

やったー入門許された!

「では今日はこれで失礼致します。」

帰ろうとすると

「一寸待て わしの高座を聞いて行き」

と師匠が。

楽屋から客席に行くともう超満員。角座と言うのは880人入るマンモス寄席。まぁ寄席と言うよりも演芸場でんな。

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大阪は漫才が主体ですから、落語は1本か2本。

次から次へ出てくる漫才。扇子で頭を叩く者、客をいじり倒す者、そして音楽ショー浪曲ショー。

話術を楽しめたのは夢路いとし、喜味こいしさんの漫才のみ。

余談になりますが後にこのお二人は大阪市宝(※大阪市無形文化財)と言うのを頂きます。さもありなんと感じたものですが。

東京はトリの前を「ひざ」その前が「ひざ前」と呼びます。大阪ではトリの前が「もたれ」その前が「しばり」。この場所が上方落語の最高の位置とされております。

ちなみに東京では中入りの後は「くいつき」と言って、二つ目の噺家もしくは若手真打が上がります。大阪では「かぶり」と言って奇術師が出るのが常套(じょうとう)。

東京の寄席と違い人数が多いので休憩時間内にトイレから帰って来れないから、聞くものよりも見る物と言う考え方かも。

東京の寄席とは逆で大阪での落語は色物扱い。入門したての頃、うちの師匠がある漫才師に「師匠悔しかったら落語家で客入れて見なはれ」と言われた。あの悔しそうな顔した師匠の顔が未だに忘れられません。あれから島之内教会を借りて漫才に頼らない落語の定席を作る決意をしたみたいですな。

さて角座。お客さんも漫才ファンばかり。落語好きは落語会や特定の噺家の独演会や一門会などに行くので、角座での噺はほとんど聞いてくれない。

座布団が敷かれ噺家が出てきただけで如実に嫌な顔したり、便所に行ったり売店にお菓子を買いに行ったり、あくびをしたりザワザワザワ~。

だからやるネタも決まってくる。松鶴はいつ行っても相撲場風景。一升瓶におしっこすると言うまぁ下品な噺。私は一度新宿末広亭でやったら、お客様に「汚いなぁ」と言われた一言で二度とやらなくなりました。

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松鶴の出囃子舟行きで高座に出た松鶴はいつもと違ってた。

「このお話は大阪は大川町」

十八番の高津の富、30分みっちり。客席は無反応。つまり私一人の為に演じてくれはった。

落語と言うものは笑わすだけと違うねんぞ、と言う魂を高座から落語を通して教えてくれはったんですな。

後日米朝師匠の名言で「この噺はこれから何辺でも聞く機会が有るやろ。けどこの噺家のこの噺は二度と聞けないと言う気持ちで聞きなさい」

松鶴の高津の富を聞いて「この人に自分の人生を預けて見よう」と、心の中の自分にそっと語りかけました。

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