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⑩無礼講~師匠六代目笑福亭松鶴とわたし~笑福亭鶴光

笑福亭鶴光

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ドラマ『どてらい男(やつ)』の出演が決まった六代目笑福亭松鶴師匠。上機嫌で出前を取ることになりました。その時、鶴光師匠が六代目笑福亭松鶴師匠から教わったこととは?

ほっこり温かい気持ちになって、前向きになれると大好評、笑福亭鶴光師匠のエッセイコラム第10回です!じっくりとお読みください。きっと心に響くものがあるでしょう。

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無礼講

ドラマの仕事が決まった途端、ものすごく上機嫌。

「おい小腹が空いたな、何ぞ食べようか。今日は無礼講、何でも好きな物注文せえ!わし、きつねうどん・・」

きつねうどんから入られると、辛いですな。

その店は二十円プラスすると、生卵を入れる事が出来た。風邪気味やったので一寸精つけようと思うて、私はきつねうどんの生卵入り。松鶴は普通のきつねうどん。

出前が楽屋に運ばれて来て、さぁ食べようかと同時に蓋取った途端に師匠の顔色が変わった。

「何でお前だけ生卵が入ってるね」

それからコンコンと説教食らいました。他人に物を奢ってもらう時は、いくら無礼講と言われてもその人よりワンランク下の物を注文するのが礼儀なんだそうです。

私の場合は素うどんを注文すべきやった。怒られてしょんぼりしてたら、先輩が慰めてくれました。

「やっぱり、私が間違ってましたかな?」

先輩神妙な顔で

「生卵だけにキミが悪い」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

嘘はつくなとこれもよく言われました。

松鶴の趣味は食道楽。あちらこちらの飲食店を食べ歩いて、美味しものを楽屋で仲間に教えるのが楽しみの一つ。

楽屋で用事をしてると、うちの師匠が外から戻ってきて

「お~ええとこに居った、美味い豚汁の店見つけてきた」

自分で書いた地図と百五十円くれました。

探したんですが中々見つからない。仕方がないので大衆食堂で玉子丼食べて帰ってくると師匠が待ってまして

「どうやった?」

「美味しかったですわ、あんなに旨い豚汁初めて食べました」

「そうか、良かった。又ええとこ見つけたら教えたるわ」

「有難うございます、ご馳走様でした」

楽屋を去ろうとすると、上方柳次 柳太と言う漫才の方が入ってきて

「師匠、師匠に教えてもらった豚汁や今日休みでしたよ」

「待てぇこの腐れ弟子、おのれ何処へ行ってきやがったんや」

嘘はつくな。
芸人と言う者は、世間から極道者の代表みたいに思われてる。まだその上に嘘までついたらもうそいつは人間失格や。

絶対にうそはつくな。

そんな師匠が嘘をつくようになりました。それは晩年に出来たガールフレンドの為に。

まぁこの話はいずれ又の機会に。

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