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㉔なんの勝負?~師匠六代目笑福亭松鶴とわたし:笑福亭鶴光

笑福亭鶴光

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いらちの六代目笑福亭松鶴師匠。やたけたエピソードだけでなく、いらちエピソードも多かったそう。それでも、変に気を回すこともあったようで。これも人間臭い六代目笑福亭松鶴師匠らしいエピソードでしょう。

笑福亭鶴光師匠に思い出をつづっていただきました。抱腹絶倒のエッセイコラムも第24回です。今回も笑福亭鶴光師匠の筆が光っています。お楽しみください!

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なんの勝負?

松鶴はいらちなだけでなく、時々気が長いこともあったんです。

ある漫才師に誰でもやらせる女を紹介されて

「師匠そのままホテルへ」

「いやいやとりあえずステーキ食べに行こう」

漫才師と女性と三人で高級な店へ。

「師匠、そろそろホテルへ」

「もう一件フラメンコの踊り子の店で一杯」

又思いっきりお金を使うて、さぁこれからお楽しみと思いきやその女がこの人とは嫌やと言い出した。逆上した松鶴が発した言葉

「この売女(ばいた)!」

まだ何もしてへんがな。

女性は怒って帰ってしまう。仕方がないので、その漫才師と二人でタクシーに乗ると、雨がパラパラ。そこで師匠の顔をちらりと覗き見ると目に涙浮かべてたそうです。これが本当の涙雨。

あとは旅館で酔っぱらって、二階から壁と壁の間に挟まってそのまま朝まで寝てた。忍者やがな。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

旅館といえば、こんなこともありました。

ある寒い日地方の落語会のまくらで師匠が

「昨日近くの旅館に泊まりまして、酔うて帰って、何かのスイッチを切ったんですな。これが全館の暖房機を止める奴で全員が風邪をひきまして明くる日旅館の主人がぼやいてました松鶴は暖房(乱暴)な奴や」

客席の反応はいまいちでした。

本人は受けると思うたんやろね。高座から降りてくるなり

「ここの客は高尚な洒落は解らんみたいやな」

暖房と乱暴?これ高尚なギャグだっしゃろか?

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

東京にもいらちな方はおられまして、落語芸術協会初代会長の6代目春風亭柳橋師匠がそうです。大阪へ行くと言うので弟子が見送りに行くと、1時間前からホームで待ってたとの事。

「師匠早いですね」

「当たり前だ、新幹線は速いんだぞ」

松鶴もいらちですから早い時間からホームで並ぶ。他の人の迷惑になるのも、おかまいなし。

飛行機でも搭乗券持ってるのに、一番前に並びたがる。

その訳は「ええ席に座れる」。

もう決まってるちゅうのに。

分かりやすいいらちエピソードがあります。

大阪厚生年金会館で一門会がありました。

師匠はいらちの性格、午後6時開演やから4時に会館に集合と号令をかけます。弟子どもが楽屋へ集まると、そこへ口に楊枝を咥えた松鶴(木枯らし紋次郎じゃがな)

「ハハハ勝ったな、わしは3時半から来てた」

なんの勝負や?

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