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コロナがなかったらやらなかった?桂枝女太師匠に独演会への思いをインタビュー!

ふじかわ陽子

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毎年独演会シーズンの11月。しかし、今年はコロナの影響で中止が相次いでいます。そんな中、11月20日に桂枝女太師匠の独演会が天満天神繫昌亭で開催されます。

このコロナ禍でも開催する理由も踏まえて、お話をうかがいました。プロの落語家が持つ焦りと恐怖感が、開催の背景にあったようです。それはどのようなものでしょうか。

社会は動き始めましたが、なかなか元の日常は程遠いようです。じっくりお読みください。

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忘れられる恐怖心が独演会開催に

――早速ですが、コロナ禍で今年は独演会を中止される方が多い中、今回独演会を開催される理由は何でしょうか?

枝女太師:年に1回、独演会は開催しているんです。今年は2月29日に繫昌亭で行っています。コロナで騒ぎ始めている頃、自粛前のぎりぎりセーフでしたね。チケットは完売したけれど、当日までに3割ほどのお客さんからキャンセルが出ました。

――やっぱり、外出を控えるお客さんがおられたんですね……。ん?じゃあ、年に1回はもう済んでいますよね?

枝女太師:大体1年に1回しようと。だから、1年半空くこともあるし年に2回のこともある。普段だったら、今年はもう2月に開催しているのでやらなかったでしょう。

――それなのに、やらなくてはならない理由ができた?

枝女太師:独演会は足掻きなんです。緊急事態宣言が解除され社会は動き出していますが、演芸はそうじゃない。どうしてもお客さんの意識が元に戻らず、客足は遠のいたまま。これが続くと私は忘れられてしまうのではないか、という恐怖心が湧いてくるんです。

――独演会開催で「ここにいるぞ!」と伝えたい。

枝女太師:そうですね。私の師匠五代目桂文枝の若い時分は、別の恐怖心があったでしょう。上方落語が途絶えてしまう恐怖。それを考えると、私は自分のことだけですから気楽なもんです(笑)。

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五代目桂文枝師、最後の高座が今回のトリネタ『高津の富』

枝女太師:私の師匠といえば、人生最後のネタが『高津の富』だったんです。2005年1月10日の高津の富亭でした。入院中に少し良くなって、ちょっと出よかと。……なんとかできた感じでした。けれど、最後の場面では馬力をかけていたのを覚えています。

――ご覧になっていて、つらくなかったですか?亡くなる2か月前ですし、文枝師匠もだいぶ……。

枝女太師:一門の弟子で、最後の舞台が見られたのはわずかでした。見られて良かったです。

――今回の独演会で『高津の富』はネタおろしだとうかがっていますが、この時の思い出が原因でしょうか?なかなか高座にかけられない。

枝女太師:うーん……。ゆったりと「お話」しようと思った時に浮かんできたのが『高津の富』です。還暦を過ぎて力の抜き方が分かってきて、やっとできるかなと。

――なるほど。『高津の富』は馬力をかけようと思ったら、短距離走の勢いでフルマラソンを走る感じになってしまいますよね。

枝女太師:若いころに見た桂枝雀師匠の『高津の富』がそんな印象でした。むちゃくちゃ面白かったんです。その反面思ったのが「むちゃくちゃしんどいやろな」(笑)。

――あー、分かります。

枝女太師:今の年齢になり、淡々とできるかと思いやらせていただきます。

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前座ネタの『狸賽』が一番難しい

枝女太師:あ、『高津の富』はネタおろしじゃないですよ。

――失礼しました。でも、繫昌亭などでかけられている様子がなかったので。

枝女太師:大阪新町の和カフェ&ダイニング「茶美」で「新町噺・桂枝女太」という会をやらせていただいています。高校の落研の先輩の店で、その先輩が先に一席あとに私がという形で。2011年からやっています。そこで1回、『高津の富』をかけています。

――他の演者を気にせず大ネタもかけられる会なんですね。

枝女太師:私にとって勉強会のような場です。今回の独演会のネタ『高津の富』『一文笛』、先日の坊枝くんとの会の『百年目』も、「新町噺」でかけています。

――今回の独演会はあと『狸賽』もかけられますね。

枝女太師:実は『狸賽』が一番不安なネタです。

――えー!?『狸賽』は入門してすぐぐらいに覚えるネタじゃないですか。

枝女太師:私も高校の落研時代から、何百回とやってるネタです。若いころは勢いでやれていましたが、積み上げるほど分からなくなるネタです。どこに重点を置くか。力を抜きながらが、逆に難しい。どんな評価を下されるのかが怖いですね。

――年齢を重ねるごとに楽になることと難しくなることがあるんですね。

枝女太師:他は若者を演じるのが難しく感じるようになりました。『一文笛』なら主人公のスリです。彼は20代後半の若者でしょう。

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中トリはじっくり、大トリは笑わせて

――登場人物と実年齢が離れていると難しいのでしょうか?だったら、丁稚が一番難しいような気がします。

枝女太師:丁稚は逆に楽なんです。マンガ的表現をすれば良いですから。今は馬力のいるネタもしんどくなっています。でも、大阪のお客さんは大トリで笑って帰りたいと言われる。だからか、四天王は晩年、大トリでなく中トリにいっていましたね。馬力のいる爆笑ネタは、若手真打が大トリでやって。

――東京では、じっくり聞かせる噺を大トリで聞きたいというお客さんが多いと聞きます。

枝女太師:それが地域差なんでしょうな。じっくり聞かせる噺も聞きたいけど、最後は笑いたいというのが大阪。今回の独演会では『高津の富』を大トリにもっていきます。

――中トリが『一文笛』で。

枝女太師:そうです。前座の桂白鹿さんの次が『狸賽』になります。内海英華師に助演をお願いしていますので、こちらもお楽しみに。

――お客さんにメッセージはありますか?

枝女太師:不要不急の中、わざわざ電車に乗ってお越しいただけるのは演者にとって、これほど嬉しいことはありません。ご期待を裏切らないよう努めます。ま、私らにとっては「不要不急」やないんですけどね。やらんと忘れられる(笑)。

天満天神繫昌亭でお待ちしています!

今回はじっくり桂枝女太師匠にお話をうかがいました。コロナ禍があったからこそ、開催される独演会。そこでかけられるのは五代目桂文枝師匠との思い出のネタとのこと。60代になった今だからこそ、できる落語があるそうです。

毎年開催される独演会でも、同じものは二度とありません。お見逃しなく!

桂枝女太独演会

日時:令和2年11月20日(金)18時半開演

🌟インターネット配信あります🌟

ご確認ください|チケットぴあ
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会場:天満天神繁昌亭 (大阪府大阪市北区天神橋2丁目1−34)

木戸銭:前売り3000円、当日3500円

チケット販売所:天満天神繁昌亭チケット窓口(11時~20時)

        ぴあ店頭(0570-02-9999)

        セブンイレブン(Pコード:597-700)

お問い合わせ:オフィスM 090-3612-7139

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