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②偽物の上方落語家の僕は、自分をカフカに重ねた~SFと童貞と落語:笑福亭羽光

笑福亭羽光

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NHK新人落語大賞を48歳で受賞した、遅咲きエース・笑福亭羽光さん。順風満帆とはいえない人生、アイデンティティにも思い悩むことがあるのだそう。

上方落語家の定義とは何か?あなたも一緒に考えていただけないでしょうか。笑福亭羽光さんの独白、第2回の公開です。お楽しみください!

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偽物の上方落語家の僕は、自分をカフカに重ねた

11月23日、無事NHK落語大賞の放送された。放送されるまでは心配だった。僕の優勝自体が誰かの回想シーンで、ファンファンファンと現実に戻るのではないかと思ったり。また編集の力で別の人が優勝してるんやないかと心配したりしていたが、無事放送され現実だったようだ。

観てくれた人からは概ね良い評価だったが、現場のピリピリ感は出場者全員の表情に出ていたようだ。

現場は出場者の勝ちたいという気合と、審査されるという怖さで満ち溢れていた。

普通、落語会で現場に到着したら、若手は師匠方先輩方に挨拶に行くのだが、スタッフから審査員の師匠方の楽屋は教えられません…と言われた。そこで賄賂を渡す可能性があるからというのだ。凄い厳重な警戒の元、僕達出演者は、リハで現れた師匠方に挨拶をした。もちろん賄賂を渡す隙は皆無かった。

そのエピソード一つとっても製作者サイドも出演者サイドも、番組の公正さを遵守している事は明白である。

観てくれた人の中で、まずそもそも羽光は上方落語なのか?と言う人がいた。

それについては別のインタビューでも聞かれたが、ずっと僕も悩んできた。

入門してしばらくは師匠から古典の上方落語を稽古してもらったし、二つ目になってからは江戸に来る上方の師匠方から落語を習った。落語会等でも上方落語笑福亭羽光と紹介される事が多い。しかし東京生活が長いので言葉もなまってきたし正確な大阪弁は喋れないし、活動の拠点は江戸である。

 江戸落語でもなく、上方でもなく、お笑い出身で、年とってるので若手かどうかもあやふや……この居場所の無い自分を、フランツカフカに重ねてしまう。

『変身』『城』で人間のアイデンティティーを描いた作家カフカもまた、アイデンティティーを問い続けた人生だった。チェコのプラハで生まれたカフカ。彼はドイツ語を話していたらしい。当時チェコはドイツに支配されていて、しかもカフカはユダヤ人。何処にも所属出来ず、自分って何者?って問うに相応しい生い立ちである。なんともいえない居心地の悪さだ。

だからこそカフカの作品は、現代の僕達の心の隙を埋めて一緒に悩んでくれる。

自分とは何者か?……という問いは自分の落語とは何か?……という問いとかなり似ている。

きっと僕は自分とは何か?……を問い続けながら自分の落語を探す旅を一生続けると思う。

永遠に『城』にたどり着けない測量技師のように。

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