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⑳寄席囃子~師匠桂米朝と過ごした日々:桂米左

桂米左

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ご自身のお師匠さんである桂米朝師匠について、現時点で半年にわたりつづってくださっている桂米左師匠。実は落語家だけでなく、長唄囃子望月流の名取としての顔もお持ちです。特に太鼓の腕は「出囃子は米左に太鼓を打ってほしい」とリクエストもあるほど。

今回は囃子にひときわ思い入れのある桂米左師匠に、桂米朝師匠と寄席囃子についてつづっていただきました。切っても切り離せない上方落語と寄席囃子の深い縁、もう一歩踏み込んで知りませんか?

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寄席囃子

師匠はお囃子をとても大事にしてはりました。上方落語には「ハメモノ」と言われる噺の中に三味線太鼓が入るのが一つの、大きな特徴です。

雨が降ったり雪が降ったり波が寄せたりなどの自然現象を太鼓で表し、散財や幽霊が出てくる場面など三味線太鼓で表したり、これは歌舞伎の影響を受けお客様へのサービス精神で、より一層噺を楽しんで頂こうという先人達の工夫である。

お囃子は上方落語に欠かせない重要なものなのですが、一段低く見られていた時期があり「三味線にこれだけ(ギャラ)やっといたら充分やろう…」という雰囲気やったそうです。

師匠はそんな状況を憂い「大事なもんやから」と相応のギャラを渡し三味線の地位を上げました。

「兄さんが三味線にようさん渡すからかないまへんわ」と言われた、と後に師匠から聞きました。

ですがそのお陰で絶滅寸前だったお三味線さんの数が増えて現在に至っております。

林家染丸師匠も三味線の育成に力を入れておられます。

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ハメモノが入る噺をする時「ちょっと合わそか」と言いはります。特に芝居噺や滅多に掛けない噺となると念入りに合わせます。

今、太鼓やツケ打ちが出来ないで芝居噺をする人が増えています。この方達の下座を合わせる時によく「ここ適当にやって」という事を言いはります、困ります。

適当にやって失敗したら下座の失敗やなしに演者の失敗になるからです。

「ハメモノ」入りの噺を、特に芝居噺をする者は太鼓が打ててツケが打てて「こうするんや」と見本を見せられるようでないとアカンのです。

師匠はそれを上回る知識を持っていて本職の方が聞きにくる位の人でしたから合わす時は入念に合わせていました。また師匠に気に入ってもらえるようにこちらも必死で食らいついて満足して頂こうと思い頑張りました。

師匠に教えて頂いた囃子は「都囃子」という出囃子の鉦の打ち方…だけです。あとは兄弟子に教えて頂きました。まぁ私も囃子が好きでそれが高じて望月流囃子の名取になりました。

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打つ…と言いましたが、今「打つ」と言う方がとても少ない、ほとんど「叩く」と言うてます。打楽器なので「打つ」のです。太鼓は叩くものではなく打つものなのです。

叩けば「音」しか出ませんが打てば「音色」がでる…私はそう思ってます。

やり過ぎた囃子ですが、関東の学校の落語鑑賞会で師匠が解説…めっちゃ贅沢…で打合せの時に「雨音の東京と大阪の違いをやるさかい」と兄弟子が「師匠、私それ知りません」「あぁ判ってる、大丈夫、米左が居てるさかいに」…嬉しかった!

寄席囃子は所詮寄席囃子でコンセプトはあくまでも「らしく」でいいのです。ですが本物を知っている「らしく」と知らない「らしく」では厚みが違います。

本物を知っているとその「らしく」には奥行がありそれらしく聞こえますが、知らない「らしく」は奥行が無く上滑りしています。

けどまぁ、寄席囃子は寄席囃子で堅苦しくなくお気楽でいいのです…どないやねん!

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