笑福亭羽光師匠も、ひとたび高座を下りればお父さん。息子さんが一人おられます。その息子さんの三者面談に行かれたとのこと。最初、息子さんは嫌がっていたのだそう。その理由は……。
笑福亭羽光師匠の客席からはうかがい知れない一面が書かれています。じっくりお読みください。
子供の三者面談に行って下ネタを言ったりおちょける
静岡県三島市に妻と子を置いて、東京杉並区に単身赴任している。三島の妻の実家と東京を行き来する生活を10年以上続けているのだ。忙しい時期はほとんど東京に居るし、暇な時期はほとんど三島に居て家事をしている。家族が離れ離れになった時、息子は3歳だった。
ありがたい事に、落語家として、寄席や東京での出番をそれなりに頂いていたので、ほとんど東京で暮らし、三島には帰らなかった。息子の授業参観や運動会等はあまり参加した記憶がない。小学校の卒業式や中学の入学式はコロナで僕の仕事が激減していた時期だったので、たまたま出席出来たが、それ以外の息子のイベントごとには参加してこなかった。
そんなある日、三者面談があるという連絡が入った。中学二年生になるとそろそろ来年の高校受験の事も考えはじめなければならない。普段の学校での成績や態度についても、担任教師と親と子供の三者で面談するのだ。
妻がたまたま忙しい時期だったので、「ほな、俺、三島に居る時期やから、俺が三者面談行くわ」と伝えると、息子が反対した。妻に来て欲しいというのだ。もし妻がどうしてもダメなら、義母(息子にとっては祖母)に来て欲しいと。
「何で俺やったらあかんねん!?」と問い詰めると、
「だってパパ……笑福亭羽光なんだもん」
との事。
よくよく聞いてみると、僕は三島市で落語会もやっているし、僕が落語家である事は、息子の中学でも知れ渡っている。しかも下ネタを中心に活動している事がばれているので、僕が来校する事により、友達にひやかされるのが嫌なのだそうだ。そして万が一僕が三者面談中に下ネタを言ったり、おちょけたり(ふざけるの大阪弁)したらどうしようと心配した故のことだった。
絶対におちょけない、下ネタも言わない、学校寄席の営業をしない、服装も浴衣等の変な恰好はしない……という約束の元、息子の中学に向かった。
息子は終始緊張していたが、三者面談自体は30分で終わった。志望校について話し、夏休みの学習方法を相談しただけだった。