読書家の笑福亭羽光師匠。SF小説だけでなく、ミステリー小説も好んで読んでおられるのだそう。その中でも、最近は女流作家の作品から目が離せないのだそう。その理由は…?
多才な新作落語を生み出す笑福亭羽光師匠の頭の中を、少しのぞいてみませんか。お楽しみください!
湊かなえ、角田光代、桐野夏生 等、女流作家の作品
女流作家の小説を読んだり、ユーネクストで原作ドラマを一気見したりしている。
ホラー以上に嫌な気持ちになり、目を覆いたくなるシーンが出てくる。
サムライミ監督『死霊のはらわた』シリーズは大好きだが、血が飛び散るシーンはどこか現実味がなく、パート2、パート3と続くうちにコメディーになってくる。嫌な物を観た気がしない。ゾンビ物の映画ももはや現実感はない。
しかし女流作家の描く、ドロドロした人間関係はあまりにも真に迫り感情移入しすぎてしまう。僕に女性的な、特にお婆さん的な、意地悪で嫉妬深い感情があるので共鳴しすぎてしまうのだろう。あまりにも痛々しすぎるなら観たり読んだりするのをやめたらいいのだが、ついつい観たり読んだりしてしまう。
湊かなえ原作『夜行観覧車』は、高級住宅地で起こる殺人事件を描いているが、偏差値高い私立高校に行く生徒が偏差値低い公立高校を差別したり、坂の上の高級住宅に住むマダムが、アルバイトしている主婦を差別したり と、どの町でも誰の身にも起こっていた事がデフォルメしつつもリアルに描かれている。
高級住宅地の主婦達がバザーを催す。主人公が、バザーに出品する品物がみすぼらしくて、恥ずかしくて持ち帰り捨てるシーンが出てくる。僕はそのシーンを、ホラー映画の首が飛んで血が飛び散るシーン以上に目を覆いたくなった。
角田光代の小学校や幼稚園のお受験の小説も読んだ。この小説では子供にブランド品を持たせる親同士の心の葛藤や嫉妬が描かれているが、お受験や、物欲を全く共感していない僕にも、ちゃんと感情移入できるように描かれている。
改めて【小説】は、想像力を喚起させる芸術である……と思う。そして負の感情も含めて人間のいとおしい部分だと思う。
【落語】ではどこまで描けるだろうか。