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【新連載】ロシア疑惑~日常ドキュメンタリー:三遊亭はらしょう

三遊亭はらしょう

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三遊亭はらしょうさんが寄席つむぎ初登場です!三遊亭はらしょうさんは神戸市出身、現在フリーで活躍されておられます。師匠は新作落語の大家、故・三遊亭円丈師匠。三遊亭圓丈師匠は、狛犬研究家としての一面も持っておられました。

さて、三遊亭はらしょうさんと三遊亭円丈師匠との出会いは?今回は自己紹介をしていただきました。お楽しみください!

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ロシア疑惑

はじめまして、三遊亭はらしょうです。
「えっ?ロシアに関係あるのですか?」
名前を言うと、よくそう聞かれる。ロシア語のハラショーと同じ響きだからである。令和四年になってからは特に多い。プーチンの味方かと思われそうだが、ロシアは全然関係がない。

芸名の由来は、俺の本名が原田亮だからである。そう説明すると「はらだりょう」だったら「三遊亭はらりょう」だろうと突っ込まれる。「しょう」ってどこから来たんだ?やっぱり、ロシアに関係あるんだな、と、どうしてもそちらに結びつけられてしまう。

「しょう」は、三遊亭圓生から来ている。

なんであの昭和の名人の圓生の名前を貰ってるんだ、いや、やっぱり嘘だ、それだったら「はら生」になるはずだろ。正解である。前座の時「しょう」は漢字だった。

じゃあいつ平仮名になったんだ、名前をネットで検索したら「ハラショー」というカタカナまで出て来たぞ、さらにググルと、三遊亭という亭号もなくてハラショーだけだったぞ、やっぱりプーチンの味方だろ!

なんて暇な奴なんだ、ここまで来たら俺のこと好きだろ。

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ともかく、そんなロシア疑惑もなかなか解けないので、この辺でプロフィールを書くことにする。

三遊亭はらしょうこと原田亮は、2009年に31歳で落語の世界に入った。随分と遅い入門だが、その年齢まで原田亮は演劇をやっていた。一人芝居を中心に、小さな劇場や路上で表現活動をしていたが、仕事もなく将来が見えない日々が続いていた。


そんなある日のこと、原田亮は気分転換の為、寄席の新宿末廣亭へ落語を聴きに行った。その日は古典落語よりも新作落語を口演する噺家が多く、普段、古典しか聴いたことがなかった原田亮は、どこか自分のやっている演劇にも近いような新作の面白さに没入していった。落語にもこんな世界があったのか。それまでの概念を変える新作落語家たちの登場に夢中になった。


落語の途中に日本の軍歌を歌い出し、突然立ち上がってガーコン!なる奇声を発する川柳川柳という噺家に衝撃を受けたのもつかの間、トリに出てきた噺家に更なる衝撃を受けた。それは、眼鏡をかけた出っ歯のおじいさんだった。


初めてなのに親しみのある風貌は、昔、テレビで観たような記憶がある。おじいさんは静かなトーンで客に語りかけていたかと思うと、いつ、どの瞬間にスイッチが入ったのか「ぴゃあ~」という意味不明な擬音を、寄席の外にいる通行人にまで聞こえそうなくらい大声で発した。

そこから口演したのは「新・ぐつぐつ」という演目だった。柳家小ゑん師匠の「ぐつぐつ」の別バージョンということだった。おじいさんは「ぐつぐつ」と言いながら、おでんのチクワを熱演していた。
芸術的とも言えるトリッキーな動きに、おじいさんが、完全にチクワに見えた。

新宿末廣亭からの帰り道、原田亮は「ぐつぐつ」と呟きながら地下鉄の乗り場まで、ついさっき観たチクワのおじいさんのことを考えていた。すると突然、頭の中がクリアになった。一人芝居をやって来た原田亮は、自分のやりたかったことが見つかった気がしたのだった。

もっとチクワのおじいさんが観たい!

演芸雑誌「東京かわら版」で出る舞台を調べて追いかけることになった。

このチクワのおじいさんこそ、のちに師匠となる、新作落語の神様、三遊亭円丈だった。

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