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ボーイズラブではない~日常ドキュメンタリー:三遊亭はらしょう

三遊亭はらしょう

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大好評!三遊亭はらしょうさんのエッセイ、第4回です。今回は謎に満ちた三遊亭はらしょうさんの破門理由について。とんでもないことをしでかしてしまわれたのでしょうか…。実はこういう理由だったよう。

やもすればパワハラ問題にもなる師弟関係。それでもそこに愛があれば、問題がなくなるのではないでしょうか。じっくりお読みください。

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ボーイズラブではない

「ちょっと聞きにくいことなんですけど、はらしょうさんって、昔、円丈師匠を破門になったことがあるんですか?」

落語通のお客さんから、たまに聞かれることがある。

「はい、なりました」

「そ・・・そうなんですか」

聞いて来たのは向こうなのに、何故か毎回、気まずい空気になる。

というのも、実はこの世界、破門というのはある種、前科みたいなものに近いよいうな認識がある。

破門=悪い奴

そう思われてしまうようだ。事実、過去に破門になった芸人のエピソードを聞いていると、犯罪的な事例もあったりする。

お客さんは、まじまじと俺の顔を見て、犯罪者ではないと思ったのか、突っ込んで聞いて来た。

「なぜ、はらしょうさんは破門になったんですか?」

「それはですねぇ・・・」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

それは、入門して二年ほどたった時のことだ。

その日、俺は師匠の家にいた。朝から機嫌が悪かった師匠は、俺の一挙手一投足に小言を連発していた。

「こらー!破門だー!」

当時、円丈が何か小言を言う度に、口癖のように「破門だー!」のフレーズがくっついていた。ビートたけしさんの「バカヤロー!」のような語尾をイメージして頂ければ分かり易い。さほど深い意味はない。

毎度のことだと思っていたのだが、初めて「破門だー!帰れー!」と言われたので、俺は帰宅することになった。

そして、後日、師匠宅に再訪したら「お前のキャラクターは色物の方があっている」と言われ、落語家から色物への転向を告げられた。気がついたら、落語協会からは名前が消えていた。冗談だろ?

俺は本当に破門になってしまったのだ。

落語が出来なくなった俺は、気持ちを切り替え、お笑い事務所のネタ見せなどに行きながら、また一から始めることにした。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

それから、数か月がたった頃、電話で師匠と話す機会に恵まれた。

「お久しぶりです、はらしょうです」

緊張している俺をよそに、電話口の師匠の口からは驚くべき言葉が飛び出した。

「お前、最近見ないけど、どうしたんだ?」

えっ?いや、どういう意味なんだ??

更に驚きの発言は続く。

「来月、一門会があるから、出ろ」

えっ、俺は、まだ一門なのか??

皆目分からぬまま、後日、一門会で師匠と久々に再会した。

「僕は、まだ師匠の弟子なんですか?」

「お前が弟子だと言いたければ弟子だ」

「えっ、では、弟子でお願いいたします」

「分かった」

何があって、どうなったのか分からないが、俺は師匠の弟子のようだ。

そして付け加えるように円丈はこう言った。

「お前は自由にやった方がいい、円丈、個人の弟子ということで好きなことやっていけ」

明確な理由は分からぬままだったが、そのあと俺は色物弟子、ハラショーとして再スタートし、しばらくたって、三遊亭はらしょうというフリーの落語家になった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

晩年、師匠がよく言っていた。

「俺は、お前を破門にした時に周りから言われたんだ、なんではらしょうを破門にしたんだ、うん、なんだろう、俺は後悔した、悪いなと思った」

破門の理由は、特になかったようだ。ただ、あの日、円丈の機嫌が悪かった、それだけのことである。

そして、その話をする時、師匠はいつも最後にお決まりのフレーズを言う。

「俺はお前のこと、好きなんだよ」

ちょっと、気持ち悪いが、ボーイズラブではない。

口癖が「破門だー!」から「好きだー!」になったんだから最終的には良かった。

以上が、三遊亭はらしょうが破門になった話である。

世の中、理屈では分からないことだらけだが、今、こうして芸人を続けられているのは、

円丈の弟子になったからだ。すべては円丈から始まったのだ。

事実は小説よりも奇なり~チャカチャンチャンチャン~♪

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