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【主催者レポート】感情を揺さぶる芸術を!笑福亭羽光 年越し落語 2022→2023:本屋しゃん

主催者レポート

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東京都の北千住を中心に活動している「本屋しゃん」をご存知でしょうか。落語会の企画主催も手掛け、笑福亭羽光師匠や柳家あお馬さんがご出演されています。

その本屋しゃんプロデュースのカウントダウン落語会が、先月末に開催されました。寄席つむぎでも告知しましたので、ご存知の方もおられるでしょう。

この記事では、当日の様子を主催者である本屋しゃんご自身にレポートしていただきました。とても良い雰囲気だったようですよ。じっくりお読みください。

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レポート 笑福亭羽光 年越し落語 2022→2023

みんなで夢を見ていたかもしれない。そんな、ある日の落語会についてお話したい。

「大晦日に落語会を開催したいんや」と羽光師匠。

ご相談をいただいた時、はじめは「大晦日は休みたいなあ」「集客できるかな……」「てか、準備期間が、短っ」と、正直、わたしの我儘な休みたい欲と心配ごとばかりだった。

しかし、である。羽光師匠の「大晦日に一人で過ごす人や寂しい人がきっといるはずやから、そんな人たちのために落語会を開催したいんや」というあたたかい言葉と想いに心打たれて、「よし! それのった!」と、一緒に大晦日の落語会を作らせていただくことを決めた。放送作家の和田尚久さんにもお力添えいただけることになり、会場や運営方法など、会の準備は着々(きっと)と進んでいった。

「大晦日を一人で過ごす人のための落語会を」と企画をされた笑福亭羽光師匠

結果。開催して大正解だった。
何やら羽光師匠は「寂しい落語」をしますとおっしゃっていたが、実際は、寂しさを包み込むあたたかい会だったと感じている。羽光師匠の落語は、人のかっこ悪いところも、恥ずかしいところも「ええんやで」とそっと肩を抱いてくれる優しさと力がある。大晦日、そんな羽光師匠の落語の魅力が深淵から立ち上がっていた。

『あるある帝国』『関西人のはらわた』『まめだ』と会は進む。
最後の演目は、『私小説落語ースローバラード編』。『私小説落語』は羽光師匠の代表シリーズのひとつで、羽光師匠のこれまでの人生を元に作られた作品だ。『スローバラード編』は、羽光師匠の青春時代の甘酸っぱい経験と、RCサクセションの代表曲『スローバラード』の歌詞が重なりあっている。半分屋外のようなあの場所で、好きなあの娘と寄り添って過ごした……悪い予感なんてしなかったあの夜のこと。

笑ったり、しんみりしたり、ため息が出たり…そんな羽光師匠の落語

仲入りでは、和田さんに今年の演芸界についてたっぷりお話しいただいた。わたしも聞き手役として一緒に登壇しているのに、ふむふむと聞き入ってしまう始末だ。

ちなみに、わたしはBGMに出囃子、ハメモノまで、音響役を務めさせていただいた。羽光師匠は「失敗してもええで。いじったるし」と声をかけてくださるが、そういうわけにはいかない。緊張で高鳴る心臓のリズムに気を取られないよう、羽光師匠の落語をしっかり見て、聴いて、間を感じ取る。耳も心も研ぎ澄ませる。

二時間はあっという間に過ぎていった。笑ったり、しんみりしたり、ため息が出たり、最後には涙を浮かべる人も。たった二時間の中でこんなにも人の感情をゆさぶってしまう落語は、やはり凄い芸術だなと改めて感じた。何はともあれ、お客様に喜んでいただけることが裏方としても何よりも幸せだ。

クラッカーの紙テープが華やかです

落語の後は年越し懇親会。同じ建物の2階に移動する。料理やお酒を無造作に並べて、わいわいとひとつのテーブルを囲んで食べる、飲む、話す。お客様同士はじめましての方がほとんど。しかし、すぐに「知らない人」の仮面は取れて、「今日という日を一緒に共有している人」という間柄になっていただけたようで嬉しかった。

話に夢中になっていたら、あと10分で年が明けるということに気づく。わたしは、用意していたクラッカーをみんなに配り、お客様の一人が時報を流してくれた。あと10秒……9、8、7、6、5、4、3、2、1!! みんなで「あけましておめでとう」と声を揃えながら、一斉にクラッカーを鳴らす。天井には色とりどりの紙テープの花が咲く。

「今日限定の家族みたいですね」と、誰かがつぶやいた。

連れ立って初詣に、おみくじを引いて今年の運勢は?

それから、会場からほど近い「薬研堀不動院」に初詣に行って、まだ帰宅手段があるうちに解散。別れ際、ありがとうございましたの気持ちを込めて、手がちぎれそうになるくらい、手を振って、明るいサヨナラを。

片付けやら何やらして、結局、わたしが家に帰りついたのは元旦の朝4:00過ぎ。
シャワーを浴びて、なだれ込むように布団の上に身を横たえた。


「家族か……」
確かに夢のようなあたたかい夜だった……お客様には楽しんでいただけて、羽光師匠が開催したいと思われていた会ができたんじゃないかなと安堵した。ほっとすると人は副交感神経が働くのだろう。身体と意識は溶けるように布団の中にぐんぐんと沈んでいき、いつの間にか眠りについていた。

「僕ら夢を見たのさ、とってもよく似た夢を」(スローバラード、RCサクセション より)


2023年の大晦日もみんなで夢を見られますように。また、みんなの「私小説」の1ページに残る会ができますように。


今度はわたしから羽光師匠に大晦日の落語会をご提案させていただきたいなと思っていることを、こっそりとここに宣言しておこう。

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