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【取材記事】第103回 ヨセゲー「壽新春大与世迎」レポート

三遊亭遊喜

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2024年1月18日、東京・神保町にある「らくごカフェ」にて、「第103回 ヨセゲー『壽新春大与世迎』」が開催されました。ヨセゲーの新春興行です。
いつもより出演者が増え、「三遊亭遊喜師匠・春風亭伝枝師匠・柳亭芝楽師匠・笑福亭里光師匠・立川小談志師匠・神田春陽先生」の6名が出演。
新春のスペシャル感がたっぷりで、何やら、いつもに増してにぎやかな会になったようですよ。それでは、2024年最初のヨセゲー「壽新春大与世迎」の様子を覗いてみましょう。

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2024年最初のヨセゲー開幕です!

2024年最初のヨセゲートップバッターは三遊亭遊喜師匠。今日は出演者が多いから、ぎゅぎゅっと話していくよ~と遊喜師匠。口演されたのは『てれすこ』。小談志師匠と噺を交換して教わった演目とのこと。聴き慣れない演目に、会場の集中力が高まるのが分かります。

長崎のとある漁村で珍しい魚が釣れたけれど、漁師も奉行所の役人も名前がわからない。そこで、奉行所が百両の懸賞金を出して魚の名を知っている者を募るのですが…。

遊喜師匠の落ち着いた声色でお奉行と懸賞金目当てでやってきた頭はキレるが欲も深い男の頭脳プレーのクールさが滲みます。噺の真ん中を過ぎると、雰囲気はがらりと変わり、しっとりと絡み合う夫婦の慈愛に満ちる場面へ。会場も息をのんで夫婦のやり取りを見守っていました。遊喜師匠だからこそ、クールな場面とちょっぴり切ない場面の見事な演じ分けでした。

続いての登場は、立川小談志師匠。演目は『啞の釣り』。遊喜師匠に続いて、魚が出てくるお噺。七兵衛は与太郎に自分が上野の殺生禁断の池で鯉を釣って商いをしていることがバレてしまい、一緒に釣りに行くことに。バレないように静かにしなくちゃいけないのに、そこは与太郎、ガンガン喰いついてくる鯉に嬉しくなりきゃあきゃあと騒ぎだします。そしたら、そりゃまあ、見回り人に見つかってしまい…。


小談志師匠は登場人物の愛嬌を惹きだすのがとてもうまく、与太郎の憎めない魅力がにじみ出ていました。きゃあきゃあ騒ぐ与太郎に、あちゃあ、やっちまったなと思いつつ、愛らしさがあり、会場に笑いが起こります。さらに、見回り人に、釣りをしていた言いわけを伝える時の鯉の真似が、とてもコミカルで、ここでも笑いがどっと起こります。登場人物を愛おしく思わせてくれる落語の醍醐味に触れたような瞬間でした。

さてさて、新春ヨセゲーはどんどん進みます。お次は、春風亭傳枝師匠。文治師匠との京都旅で食べたうどんが最高においしかったというお腹が空くおいしそうなエピソードからスタートし、そこから繋がるは『時そば』です。

傳枝師匠の「時そば」は音楽を聴いているようにリズミカルで最初から最後まで会場もノリノリ! 特にそばを食べる仕草は絶品。最初に出てくるうまいそばや「あたりや」と次に出てくるちょっと頼りない味であろうそば屋「まごや」のそばの違いの表現力は驚きです。この2つのそば屋の対比が、うまくそば屋をちょろまかす男とそれを真似て見事に失敗する男の対比をより色濃くなり、「時そば」の魅力が増していました。「まごや」のつゆを一口飲んで、意識が遠のく男の様子は、もうどこかにトリップしてしまっている感がびしびし伝わってきて、もはや映画のスローモーションのシーンを見ているかのような心持ちにさえなりました。すべてのシーンが目の前に鮮明に立ち上がってくる傳枝師匠の落語は、扇子と手ぬぐいと噺だけで世界を作り上げる落語の魅力そのものが立ち上がっていました。


今なん時だい? ということで、ここでちょうど仲入りのお時間です。

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南京玉すだれも飛び出した!


仲入りを挟んでの登場は、神田春陽先生。講談です。普段、講談の会では出囃子は流れないそうですが、今日はヨセゲーの日! ばっちり春陽師匠の出囃子「虎退治」が気分をアゲてくれました。しかし、春陽師匠はタイガースファンとのことで…トゥーランドットより

「誰も寝てはならぬ」にしようかな~という春陽先生のお茶目ぶりで会場が和みます。演目は『次郎長伝 石松三十石船』。

「清水次郎長伝」の中でも笑いがたっぷりの愉快な場面。清水次郎長の子分森の石松が、「次郎長こそが街道一の大親分だ」と語る江戸っ子に、では、子分では誰が評判がいいかと、話を移す。しかし、いつまでたっても石松の名前が出てこない。しびれを切らし「次は、次は」と自分の名前が出てくるまで聞き続ける石松。そんな必死だけど滑稽な様子が、春陽先生によってテンポよく楽しく進みます。春陽先生の石松は、そのキャラクターが良く浮かび上がり、日曜の夕方に家族団欒で見ていたアニメに出てきそうな親近感が湧いてきました。

神田春陽先生のいぶし銀のような声色が渋く響き渡り、最後まで会場がグワッと集中して聴きいっていました。講談は敷居が高いのでは? 難しそうと思っていらっしゃる方も、春陽先生の講談を聴けばそんな懸念は吹っ飛ぶことでしょう。

ヒザは柳亭芝楽師匠。楽屋で、ヨセゲーメンバーで新年の抱負を語り合う中、芝楽師匠は「今年は落語をちゃんとやる!」と宣言をされたそうですが、今日はちゃんと「南京玉すだれ」を披露してくださいました。期待を裏切らない師匠です。「めでたいな~めでたいな~」の掛け声とともに、会場からは一糸乱れぬ息の合った手拍子が響き、一気に賑やかで華やかな空気になります。

次々と形を変える玉すだれ。「日の出」や「裸電球」など、芝楽師匠ならではの、文字通り体当たりな、芝楽師匠らしい玉すだれで大盛り上がり! 新春らしいおめでたい一席でした。ヨセゲーらしく、いろいろな演芸に出会えて嬉しい夜です。

あっという間にトリの笑福亭里光師匠の登場です。はじめにいくつか「みじかいらくご」を披露。説明なしに突如はじまる言葉遊びは、なんとも里光師匠らしい遊び心が光ります。エコバッグを持参し忘れた時、5円でレジ袋を買うのは嫌だから、100円でエコバッグを買う! という里光師匠。先日、引っ越し先でダンボールを空けたらエコバッグがぎっしり詰まってたとのことです…そんな里光師匠が口演されたのは『始末の極意』。

大阪では節約することを始末というとのこと。始末がうまいと思っている男がさらに上をいく始末の達人に、その極意の教えを請います。度を逸した、もはや無茶ぶりな節約術にどよめく会場。里光師匠のたんたんとした噺術がその無茶ぶりをもっともらしく言う様子を助長させ、さらにおもしろい。

各所にシャレの効いた噺ですが、「世の中に無駄なものはない」という考えは素敵ですね。2024年も商売繁盛、金運アップしますように!


いつもより出演人数が多いけれど「もう終わっちゃうの?!」と、名残惜しさが漂う中、閉幕です。楽しい時間は早く過ぎるとはこのことですね。出口でお見送りをする師匠方に、「たのしかったよ~」とお声がけされるお客様の顔はなんだか開演前より柔らかくなっているようでした。

最後にみんなで「にゃー」っと集合写真。
あれ? 里光師匠は…?!

たくさんバリエーションがあって、出演者の個性がイキイキとするのは、チームだからこそ作ることができることを改めて感じさせられました。
2024年のヨセゲーがどのような会をしかけてくれるのか?! 今年のヨセゲーがますます楽しみになる新年最初の会でした。

次回は2月15日で、テーマは「色恋の噺」。キュンとしちゃいそうなテーマに、今からドキドキです!


ヨセゲー #104【ラブゲット大作戦ー色恋の噺ー】
2024年2月15日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2500円 前売:2000円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)

ツイキャス落語会 ヨセゲー #103【壽新春大与世迎】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/279618
配信期間1/18 19:00~2/1 23:59

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