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⑥長屋~師匠六代目笑福亭松鶴とわたし:笑福亭鶴光

笑福亭鶴光

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破天荒なエピソードの多い六代目笑福亭松鶴師匠。その中でも鶴光師匠の中で印象に残っているエピソードをつづっていただきました。

六代目笑福亭松鶴師匠なら『らくだ』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。『らくだ』の世界観そのままな松鶴師匠の暮らしの一端がうかがえます。

しかし、破天荒だけでないのが六代目笑福亭松鶴師匠です。弟子である鶴光師匠が見る人情の人「六代目笑福亭松鶴」の姿を、一緒に胸に焼き付けましょう。

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長屋

♫呑んだくれよと指さされても

酔った目で見りゃ長屋も御殿♫ 

私が作詞した歌謡曲『松鶴物語、酔いどれ五枚笹』。

この『酔いどれ五枚笹』の冒頭部分ですが、私が入門したての頃うちの師匠は、住吉区粉浜の二階建ての長屋に住んでました。

長屋と言えば古今亭志ん生師匠のなめくじ長屋が有名ですが、志ん生師匠は長屋話が得意でした。あれは経験上から生まれた芸ですな。

うちの師匠もらくだのようなスラム街の住人の描写が実に上手かった。

豪邸や高級マンションに住んでる噺家には出来ない身体からにじみ出る芸。

私が入門する前から貧乏やった。

先輩が自転車にみかんを二箱積んでお歳暮として持っていき、適当におしゃべりして帰る途中でライター忘れたので取りに戻った。そしたら何と松鶴自ら玄関に茣蓙(ござ)敷いてそのミカン売ってた。あの売り方はプロやなと感心したそうです。

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定期の使いまわしもしてました。

10日間興行ですから後の20日間が無駄になる。それを芸人同士で安く売り買いする。

松鶴が50歳の時に買ったのが、30歳漫才師の定期。昔の定期駅員さんに見せて改札を通る。

悪いことですが、年の所を手で隠して行けば見逃してくれた。

50歳の師匠、堂々と30歳の定期で通り抜けようとすると、駅員さんが「もしもし、あんたいくつですか」言われた途端発した言葉「芸人に歳無い」

その時の収入源は主に道頓堀の角座。

東京の寄席は「ワリ」と言う制度をとってますから、入ったお客様によってギャラが変わってくる。ですから二日目とか三日目に配給される。

大阪は初日にド~ンとくれる。売れてる人は袋が立ったらしい。

その事を飲み屋さんが知ってるんですな。

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我が師匠は一切払いまへん。借金は貸した方が悪いと考える人やから。

とうとう集金に怖面のお兄さんを使いによこす。

そうすると

「あのな、初日と言うのは芸人がこの10日間の興行をどうまとめるか考える大事な日や。集金は二日目に来い。」

二日目に来た借金取りに答えた言葉

「初日に払えんものが二日目に払えるかい。」

目の御不自由な生徒さんの前で講演して、終わった後に校長先生にギャラ全部渡して

「これで机の一つも買ってください」

家に帰ってくるとあ~ちゃんが

「あんたのした事は素晴らしいけど今月の家賃の支払いどうするの?」

「しかし可哀そうな人をほっとけるか?」

あ~ちゃんの一言。

「わての方がよっぽど可哀そうやわ」

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