上方落語界でプロレスマニアといえば、笑福亭仁嬌師匠です。小学6年生のころにお母さんから贈ってもらった誕生日プレゼントは秋田書店『プロレス入門』。今も大切に笑福亭仁嬌師匠が持っておられるこの本には、実は続刊が出ていたそう。
今回は『続・プロレス入門』にまつわる思い出についてつづっていただきました。昭和40年代の中学校の風景を思い浮かべながらお読みください。ノスタルジックで心躍る世界です。
反則を楽しむ
人並み外れた大きな男が肉体を鍛え上げ力を得て体をぶつけ合い技を競う。相手の技から逃げないのがプロレスである。
相手の攻撃を受けて受けて耐えて耐えてやるだけやらせて反撃して勝つというところに魅力を感じたのか、子供だった仁嬌はプロレスファンになった。
小学校の同級生もほとんどがテレビでプロレス観戦していた。プロレス中継があった次の日は新しい技の掛け合いになっていた。
ザ・デストロイヤーが「四の字固め」で吉村道明からギブアップを奪えば「四の字固め、かけさしてくれ」と友達に掛け「痛い痛いギブアップギブアップ」と技の威力を確認し、掛けられれば「あー痛い、まいったまいった」と痛さを体感していた。
ミル・マスカラスがメキシカンストレッチを初披露した次の日も友達と掛け合いをした。ところがその友達は仁嬌少年より背も高く体重も重かった。
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メキシカンストレッチを掛けられたときは苦しくギブアップしたが、わたいが技を掛けようと相手の頭の上から両腕を羽交い絞めにしようとしたが相手の体が大きくて出来なかったので残念ながらまたギブアップしてしまった。
そんな風にプロレスを楽しんでいるうちに『続・プロレス入門』を購入した。
その中に「アメリカ歴代世界チャンピオン」のページがあり、それは当時の「歴代NWA世界ヘビー級チャンピオン」である。ここにも仁嬌少年のメモ書きがあった。

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またこの本には「反則テクニックのすべて~反則の楽しみ方」という項目がある。反則とは規則ルールにそむく事とある。スポーツでは普通反則を犯せば負けか減点である。
ところがプロレスでは反則が許されている。
完全に許されている訳ではないがレフリーが見ていない場合やレフリーが見ていても5秒以内なら反則をしてもいいのである。なんちゅうスポーツやと思うかもしれないがそれがプロレスである。
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プロレスはショー的要素が強いスポーツだから、ある程度の反則もOKである。
ある日母方の祖母つまりおばあちゃんがうちに来て一緒にプロレスを見ていたら外国人選手が日本人選手の急所を蹴ったするとおばあちゃんが「あっキンダマやられた」と叫んだ。
わたいは「えっキンダマ?キンタマではなくキンダマとも言うのか」と言葉の勉強になったのを覚えている。
ジ・アサシンAとBは同じような体格でまったく同じマスクをかぶっていたので、どちらがAかBか分からない。ましてや白黒テレビでは余計に分からない。
例えばAがやられてフラフラになり場外に逃げるとBがAのところへ行きふたりが腕を組みクルクルと三回転ほどしフラフラしながら一人がリングに上がる。
さあこれがAかBか。Bである。観客はわーわーとレフリーに訴えるが分からないから興奮する。そんな反則の楽しみ方もある。
反則を楽しむなんてこれも反則か。
