ドラマ『どてらい男』に出演するまで、六代目笑福亭松鶴師匠は知る人ぞ知る落語家でした。どうしてもテレビの影響は強いもの。一番弟子の仁鶴師匠の方がネームバリューがあったそうです。そのため、六代目笑福亭松鶴師匠は悔しい思いをされてたことも……。
そんな六代目笑福亭松鶴師匠にスポットが当たり、レギュラー番組出演が決まったそうです。その時のエピソードを現在二番弟子の笑福亭鶴光師匠につづっていただきました。今回も抱腹絶倒です。お楽しみください!
レギュラーやで
上方落語協会主催で盆踊り大会が通天閣の下で行われることに成りまして、当然のごとく会長の松鶴が事務所で打ち合わせしてると、新聞社の記者が古い師匠の写真を持って入って来てキョロキョロと辺りを見回しながら
「すいません、松鶴さんと言う方はいらっしゃいますか?」
本人に聞いたんですな。
そこで師匠が
「さぁ知りまへんな、そんな人」
「あ~そうですか、それでしたら仁鶴先生は何時お見えになりますか?」
見る見るうちに顔の色が変わった。
「俺がさんで仁鶴が先生か?帰れこのどあほ」
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ふるさとの唄祭りと言う番組で四国に行ったとき、会館の一番立派な控室で休んでますと関係者の人が来て
「すいません、控室代わって頂きたいんですが」
「ほ~どう言う訳で」
「ここは司会者の宮田輝先生がお入りに成りますので」
「あの人アナウンサーでっしゃろ、わたいはゲストだす」
「いくらゲストでも困るんです、代わって頂けませんか?」
「そんな扱い受けるんやったら、私帰らせえてもらいます」
「もう最終の船が出ましたが」
「泳いででも帰ります、鶴光帰るで」
私瀬戸内海を泳がされるかとビビりました。まぁ結局向こうが折れてくれましたが。
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所がどてらい奴のヒットのお蔭でマスコミの扱い方が一変しました。
やっぱり、芸人は売れなあきまへんな。テレビ初のレギュラーが決まりました。
お昼の番組で悩みの相談室で、回答者がミヤコ蝶々、京唄子と濃いメンバー。テーマが解答が永遠に出ない嫁姑問題です。
まず蝶々さんが
「おあかぁさん、あんたが年上やから、五〇歩だけ譲ってお嫁さんの意見も聞いてあげなはれ」
お嫁さんを擁護する唄子さんは
「そらお嫁さんが間違うてる。本間のお母ぁさんやと思うて、もっと親孝行しなはれ」
姑の肩を持つ。ごく当たり前の普通の意見。
松鶴は違いまっせ。スパッと答えました。
「そのおばんに死んでもろうたらよろしいね」
次の週からレギュラーが松之助師匠に代わってました。