いよいよ始まった真打披露興行。新真打が交代で主任(トリ)を務めていきます。遂に笑福亭羽光師匠も主任に!その時の気持ちをつづっていただきました。とても感慨深かったそうです。
お笑い芸人、漫画原作者と紆余曲折を経て二つ目の頂点「NHK新人落語大賞」を受賞、満を持して真打昇進。笑福亭羽光師匠の気持ち、一緒に感じてください。
真打昇進披露興行 初主任
末廣亭で始まった真打披露興行に出演中の新真打は、順番にトリをとっていく。トリ(主任ともいう)は、寄席の最後に出演して、その日のメインである。集客により実力も人気もばれてしまう。
僕はついに4日目にトリが回ってきた。その日は朝早く目が覚め緊張していた。ネタは2本にしぼって稽古していたので、今更どうという事は無いのだが、マクラからネタに入るつなぎ目等をシュミレーションした。
早めに楽屋に入り流れを見る。神田伯山さんが出演してくれるので、平日だが結構な客の入りだった。
色物として出演してくれたお笑い時代の知り合いの飛石連休は楽屋の雰囲気にガチガチだった。お笑いライブの楽屋とは礼儀もしきたりも違う。好楽師匠や師匠鶴光、神田伯山のいる楽屋で何処に居たら良いか判らない雰囲気だった。
しかし高座では飛石連休の漫才は、客とピタッとフィットした。僕も飛石連休もオンバト世代。客の年齢層が下がり、その世代になったのかもしれない。飛石連休は爆笑だった。
口上後、膝のボンボンブラザーズの後、いよいよ僕の出番。
高座に出た瞬間。鳴りやまぬ拍手。僕は目頭が熱くなり泣きかけた。
淡い私小説落語の『思い出のプリクラ編』を口演した。
カーテンコールまであり、僕は確信した。
童貞時代悩んだ事も、爆裂Qで売れずに解散した事も、週刊連載打ち切られた事も、全て僕の落語を作ってくれている。僕の中に在って発する台詞の一言一言に輝きを与えてくれてる。
だから全て無駄では無かった。この日の為に苦しみはあったのだ。
追い出し太鼓が鳴るなか、礼をしているので見えないが、鳴りやまない拍手の上から幕がゆっくりと閉まっていった。