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高座返し~上方落語家、東京で修業する:笑福亭里光

寄席芸人コラム

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寄席に行くと、出番の合間に前座さんが
座布団を返したり、色物さんの道具の準備をする姿を見たことがあると思います。

前回に引き続き、今回は一番身分の低い前座である「お茶くみ」の
大事な仕事についてつづっていただきました。

お楽しみください!

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高座返し

こんにちは。

笑福亭里光です。

「お茶くみ」で一番重要な仕事は「高座返し」です。

演者と演者の入れ替え時に出て行って座布団ひっくり返したりする、あれです。

大阪では前座ではなく「お茶子さん」と呼ばれる専門の女性がやったりします。

東京では必ず前座がやる。

落語と落語の合間は楽です。

座布団をひっくり返すだけで良いんですから。

問題は「色物」といわれる落語以外の芸人の出番の時です。

漫才や漫談だったらマイクを出すだけで済みます。

曲芸やマジック(手品・奇術)の時が大変。

道具がありますから。

落としたりしてしまわないかドキドキでした。

高座(舞台)ではお尻をお客さんに向けるな!と良く言われます。

演出上必要な時以外はね。

高座返しの時も同じ。

何か(舞台上で)作業する必要がある時でもお尻を向けないようにやれ、と。

それから「後戻り」もするな!とも言われました。

後退りとでも言いましょうか、縁起が悪いらしい。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

あれはマジック終わって高座返しに出た時でした。

そのマジシャンは道具をカゴに入れる方やったんです。

出番後の舞台には、使った後の道具が入ったカゴが放置してあります。

僕は真っすぐカゴに向かって歩いて行きました。

そしてカゴを掴むとクルッと回って帰って来たんです。

もう皆さんご承知とは思いますが、マジックには種も仕掛けもある。

マジックの道具はお客様が見えるところには何もありませんが、裏側には仕掛けがあったりするんですよ。

後退りをしてはいけない!とだけ頭にあった僕は、わざわざタネがある面をお客さんに見せて帰って来た訳です。

タネといいましてもね、パッと見て全て分かるようなものではないんですが。

それでも芸人にとっては企業秘密の部分です。

エラい怒られました。

道具をハケる(片付ける)時は、自分が回り込んで(同じ方を向けて)帰って来い!

これは聞いた話なんですが、鳩を使うマジックが定番の人の時に前座が誤ったのか道具出す時に鳩が出てしまった。

その前座はかわいそうにパニックになったんでしょう、とりあえず鳩を捕まえないかんと追っかけ回したんやそうです。

お客さんは笑うわ前座は泣きながら鳩を追い回すわ・・で、最終的に鳩を捕まえたんですって。

客席は多いに盛り上がったらしい。

そのマジシャンは後出にくかったでしょうね。

ところが、です。

その方は何事もなかったかのように舞台に出て行って、鳩をハンカチに変えて降りてきたんやそうです。

さすが寄席に出てるだけのことはあります。

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