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㉔もっちゃりーず~師匠五代目桂文枝と歩んだ道:桂枝女太

桂枝女太

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とても多趣味な桂枝女太師匠。多くの趣味の中で、最も長く続いているのが「野球」なのだそう。主に上方落語家で構成された野球チーム「もっちゃりーず」に創立当初から所属され、今も活躍中です。

その「もっちゃりーず」の思い出を、桂枝女太師匠につづっていただきました。五代目桂文枝師匠にも縁が深いチームなのだそう。お楽しみください!

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もっちゃりーず

ひじょうに多趣味な私ですが、モノになったものがひとつも無い。

もちろん落語は生業となったけれども、これとてどこまでモノになっているのか。

モノにはならないけれども、すぐに嫌になってやめてしまっているわけではない。どれもこれもそれなりに数年間は続けている。

その中でも特に長く続いているのが、野球。

とにかく野球が好き。いまこの原稿を書いている時点で、我が愛する阪神タイガースは16年ぶりの優勝を目指してヤクルトスワローズと熾烈な争いを続けている。

今はサッカーやバスケ、ラクビーなど注目されるスポーツも数多くあるが、我々の年代(昭和33年生まれ)にとってスポーツといえば野球しかなかった。もちろん他のスポーツもありました。当然あったのだが、プロスポーツは野球しかなかった。テレビで見られるスポーツといえば野球。それも巨人戦が圧倒的に多く、野球をあまり知らない人はプロ野球といえば必ず巨人とどこかがやるものだと思っている人もいたぐらいだ。

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見るだけではなく実際にプレーもしています。落語家の草野球チーム「モッチャリーズ」。

このチームが発足したのが正確に何年なのかは不明だが、私のぼんやりとした記憶では今年で40年になるはずだ。40年。なかなかないんじゃないですか、こんなに続いている草野球チームは。

笑福亭仁福さんが当時の若手に声をかけて結成されたのが始まり。仁福さん自信が野球大好き、巨人命、長島さん命の人で、当時よしもとの先輩達のチームに入っていたらしいのだが、そこでは一番下っ端で、思うようにさせてもらえなかった。そこで自分でチームを作ろうということになったらしい。

結成当時のメンバーは、すべてを覚えているわけではないが、背番号3で監督兼キャプテン兼4番打者兼サード兼エース(どんだけやんねん)の仁福さん。そして桂文喬さん、笑福亭仁嬌さん、笑福亭仁幹さん、少し遅れて笑福亭仁勇さん。また講談師の旭堂小南陵さん(後の4代目南陵さん)旭堂南光さん(後の南鱗さん)旭堂南学さん(後の南左衛門さん)、それに桂文福さんも入っていました。ただしこの方は1試合だけで「俺には合わん」と言ってやめていきましたが。それに私を含めて10人ほどでスタートしたと記憶している。

そしてオーナーは我が師匠、桂小文枝(後の五代目桂文枝)。ユニホームを上から下まですっかり作ってもらった。

モッチャリーズとしての記念すべき初試合、場所は福島区の浦江公園グランドだったと思うが、小雨の降るなか師匠夫妻を招いて行われた。結果はもちろん勝てるはずもなく、はっきりとは覚えていないが20点ぐらい差をつけられたと思う。師匠夫妻はそれ以後一度も顔を見せることはなかった。

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強い時期もありましたよ。というより周りが弱い時期と言った方が正確かも知れない。というのは落語家の一門ごとにチームがあった。

笑福亭一門、米朝一門、春団治一門。そしてうちが文枝一門。当時は小文枝一門。

この中ではうちが一番強かった。これははっきり言える。自慢できるとも思えないけれども・・・。

一度だけ米朝一門のベアーズに負けたことがある。普通にやれば負けるはずのない相手なのだが、まあスポーツではこういうこともたまにはある。

その試合後ベアーズの面々が打ち上げ、酒場での飲み会で桂朝太郎さんが涙を流しながら「モッチャリーズに勝った、モッチャリーズに勝った」とつぶやきながら朝まで飲んでいたという話しを後から聞いた。よっぽど嬉しかったんでしょう。うちとしてもそこまで思ってくださるなら嬉しいかぎりですが。

残念ながら今でも続いているチームはモッチャリーズだけになってしまった。

今では仁福さんも古希を迎え、数年前から試合に出られなくなり、監督もお辞めになり、今は終身名誉監督として君臨されております。

憧れの長島さんと同じ立場になれて良かったね。

ということで今は私が監督をさせてもらっています。というか、創設時からのメンバーで残っているのは私だけになってしまった。

昔のメンバーに「枝女太兄さん、今でも現役で試合に出てるんですか」と聞かれて「出てるよ」「へーッ、たいしたもんですね」と言う目が少しバカにしているように見えるのはなぜなのだろうか?

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