新作落語『ペラペラ王国』で2020年NHK新人落語大賞を受賞された笑福亭羽光師匠。とても難しいことを達成されておられるのですが、NHK新人落語大賞よりも難しいものがあるのだそう。今回はそのことについてつづっていただきました。
笑福亭羽光師匠による新感覚エッセイ、今回もお楽しみください!
桂宮治が笑点新メンバーで大スターに
僕が所属させてもらっている芸術協会のユニット【成金】から大スターが出現した。笑点メンバーになった桂宮治である。
緘口令が敷かれていて、【笑点】本番まで全く誰も知らなかった。
年末に成金メンバーみんなで集まる【大成金】の楽屋で、伯山が「笑点新メンバーは本当は宮治兄さんなんですか?」と聞くと、宮治が「俺のワケないでしょ」との事だった。
いざ、テレビで発表されると、成金のライングループに宮治から「みんな、黙っててゴメン」ときた。
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笑点メンバーになるのは、NHKのコンテストを取る10倍以上難しいと思う。
運、実力、人間関係、時期、体調、キャラクター等、全ての条件が揃っていなければならないからだ。
思い返せば桂宮治は、15年前僕の1年後輩として入門してきた。いわゆるスーパー前座で、何も教えないでも太鼓も完璧で、誰に対しても気をつかう人間だった。そして、常に落語で爆笑をとり、常に上を目指していた。
その圧倒的な実力は、僕ら先輩たちを焦らせた。
(こんな凄い後輩が居る……俺ら完全に負けてる。もっと頑張らな!)
成金メンバーは、小笑兄さん以外全員そう思っただろう。
いや、小笑兄さんも頑張らない事を頑張って、今のヘラヘラのキャラを確立させた。宮治の真逆をいこうと考えたのかもしれない。
もし桂宮治が居なかったら、成金はここまでのムーブメントを起こせていなかったと思う。
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今、これを書いている2月中席の末廣亭宮治初主任興行。宮治は、高級な鰻弁当を差し入れてくれた。かなり旨かった。
これから笑点メンバーを目指す人は、BS笑点若手大喜利のメンバーにならなければならないだろう。そしてそのメンバーの中から群を抜いて突出しなければならない。
僕はBS笑点に二度出してもらったが、下ネタをやってありえない位滑ったので、4年間干された。
僕は、まずは下ネタ以外でBS笑点若手大喜利を目指そうと思う。