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「桂米紫・桂文鹿 ふたりで200席」、遂に最終回!お客さんへ伝えたいメッセージは?

ふじかわ陽子

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2013年7月から始まった「桂米紫・桂文鹿 ふたりで200席」が2023年1月19日に最終回を迎えます。残念ながらチケットは完売していますが、足かけ10年の思い出や今後の展望についてうかがってきました。

それぞれ100席ずつは大変だったそう…。その中で、桂米紫師匠の思い出に残ることは?桂文鹿師匠が感じたことは?同期だからこそ出来たこととは?

じっくりお読みください。

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今までにない二人会を

――ご無沙汰しております。最近、師匠方の高座を拝見して感じることがあるんです。私が知ってる10年前より、米紫師匠は丸なりましたよね。若手のころは、えらい尖ってはったのに。

米紫師匠:よう文鹿くんに言われるわ。ボク、そない尖ってたか?

――はい。今はその尖りがイガグリになってコロコロ転がってる感じがします。

米紫師匠:そうか、自分ではよう分からんわ。ひとから言われることは多いけど。

――文鹿師匠は、お客さんを逃げられんようにして殴ってる感じです。今まで追いかけて殴ってる感じでしたが。

文鹿師匠:10年前、僕は全然殴れてへんかったように思えるわ。「ふたりで200席」を始めたころは打率が1割もいかへんバッターやった。

最後のチラシ

米紫師匠:それで僕に声をかけてくれたんです。「大阪で自分の会も持っていないし、大阪で二人会をやろ」と。2013年の2月やったかな4月やったかな、京都四条の焼肉屋であれこれ話しました。そこで「ふたりで200席」のアイデアが出た。

文鹿師匠:枝三郎師の600席はあったけど、100席ずつは今までないからね。「ふたりで200席」は上手なタイトルが出来たと思う。

米紫師匠:字面もあれこれ考えて。漢字にしたり英数字にしたり。チラシを印刷する段階になって、LINEでやり取りをしました。

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まとめ役の力を借りて

文鹿師匠:だいぶ悩んでる時期やったんよな、そのころって。芸歴15年を超えるとトップバッターで雇ってもらえん。二つ目で使うてもらえる武器が何もなかった。

米紫師匠:今でこそ文鹿くんは注目される落語家やけど、当時はお寺の余興を中心に回っていたからね。

文鹿師匠:お寺やと自分の十八番しかやってなくて、このままじゃいかんなと。もっと場数を踏んで、もっと落語を知ってる人にも聞いてもらえるネタをやらんとと思うた。かというて、自分ひとりでは中々よう形にせんから、米紫さんにお願いしたんや。

――米紫師匠にお願いしたのは、同期の中で心やすいからでしょうか?

文鹿師匠:米紫さんは僕ら世代のまとめ役なんです。

米紫師匠:つまり影が薄い(笑)。

文鹿師匠:そういう人が長生きする(笑)。僕は色んなことをやって尖っているように見えますが、本当に尖っているのは米紫さんです。僕は演じているだけ。

米紫師匠:どっかで変な人が好きですねん。僕が仲の良い人は文鹿くんやろ、笑福亭由瓶くん、米朝一門やったら桂紅雀くん。僕が好きな人同士は仲が悪いこともあるんですけどね(笑)。違うベクトルで変やから。

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番組も客席もバランス

――変な人と尖っている人との組み合わせの「ふたりで200席」の客席は、どうだったのでしょう?全然客層が違うと思うのですが。

米紫師匠:真逆やから、交じり合って良かったね。普段僕の会には、じっくり落語を聴いてくれる、内向的な性格の方が多いように思うねん。でも、文鹿くんは違うんや。積極的な性格の落語マニアが多い。

文鹿師匠:ヨソを出禁になった人が流れつく先が僕やねん。

米紫師匠:それは、文鹿くんがそういう人達にすごく愛想するからや。終演後の会場にずっと居残ってお喋りされるんは困りもんやけどな。「はよ帰って」の意味で椅子を片付け始めたら、一緒になって片付けてくれる。いや、はよ出てってほしいねん!って(笑)。

文鹿師匠:炊き出しで飯食った人が、食器を洗ってる感じやな。

会場の動楽亭。地下鉄・動物園前駅からスグの場所にあります

――落語マニアも注目する珍しいネタがかかることが多かったのでは?

文鹿師匠:追い込まれて無理やり出してるネタもあったからね。「ふたりで200席」でしか聞かれへんネタも多かったね。

米紫師匠:僕が先に『時うどん』を出してるのに、新作で『時うどんっぽいもの』を出したり(笑)。

文鹿師匠:バランスとしてね、うん。ええように言えばテレビ番組で「らくごのご」ってあったやん。桂ざこば師匠と笑福亭鶴瓶師匠の出てはる。両方がバチっと決めていたら、番組として成立せんかったと思うんよね。鶴瓶師匠がバチっと決めるのは分かっているから、ざこば師匠は泣いたり下りたりとよくそこらへんを考えてやっておられたはず。

米紫師匠:それで『雀の巣』かい?

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伝説の『雀の巣』

――『雀の巣』って古典落語ですか?初めて耳にしました。

米紫師匠:艶笑噺やね。どぎついエロネタ。酷い噺やで。

文鹿師匠:倫理的にあかんやろうね。強姦の噺やから。行為だけでなく流れる物も表現する。

米紫師匠:忘れもしない2020年1月22日の会や。いつも、トップバッターは直前に決めるんよ。ギャラもさほど渡されへんし。この時は文鹿くんが「ボクが頼むわー」と言った。で、前日に誰なんか聞くために電話をかけたら「まァ、明日来てからのお楽しみやな」って。

――不穏な空気がすでに…。

問題の『雀の巣』の回のチラシ

米紫師匠:で、当日行ったら、ぽんぽ娘ちゃんがおるんや。「今日、トップバッターを勤めさせてもらいます。よろしくお願いいたします」って。何するんって聞いたら、「文鹿兄さんから、もう好き勝手やってええと言われました」って言うねん。やったネタはピンク落語の『ミッションインポッしゃぶる?』や…。

文鹿師匠:うんうん。

米紫師匠:そのあと僕が、飛び道具みたいなネタやるんやったらええで。出してるネタは『七度狐』や。僕のあとは文鹿くんで『紙相撲風景』。紙吹雪をわーっていっぱいばらまくやつ。

文鹿師匠:あったなぁ、そんなの。

米紫師匠:中入り後が問題の『雀の巣』や…。無茶苦茶やりよったあとに、僕は『天狗裁き』やで。どないせーっちゅうねん。

――そこまでいくと、定番の古典ネタが異様に感じられますね…。

高め合うために

文鹿師匠:僕のあとに米紫さんが怒り狂いながら、マクラをふるというのが多かったわ。

米紫師匠:いじらな、しゃーない(笑)。

文鹿師匠:さっきも言うたけど、バランスやな。真逆なものをぶつけるから面白い。スタイルが同じ人が組んで、4席同じようなネタを並べるよりええと思う。

米紫師匠:バランスは考えるね。僕は吉弥くんと横浜で二人会をやらせてもらってるんやけど、吉弥くんは正統派古典の担い手やから、ちゃんとしたことは向こうに。僕は暴れるネタを1席入れて、暴れさせてもらう。文鹿くんと一緒の時は、正統派の顔をせんならんこともあった。僕なりに気を遣うことがありましたね。

――組む人によって、少しキャラクターを変える感じでしょうか?

文鹿師匠:キャラクターを変えるというより、高め合う感じやろうか。「ラクゴレンジャー」もそういうつもりでやってたね。それがひとつの小さなブランドになっていく。

米紫師匠:そういう意味で、メンバーが5人おる「ラクゴレンジャー」は面白かったな。プロレスに例えると、吉弥くんという藤波辰爾みたいな正統派がいて、文鹿くんという悪役レスラーもいて……あと三金の食いしん坊仮面もおって。三枚目のキャラクターやのに、仮面の下の三金はイケメンやったけどね。

――ほんまですほんまです。優しい気遣いの人。

文鹿師匠:三金は会のタイトルを考えるのが上手かったな。

メッセージをいただきました

――最後になりますが、「ふたりで200席」のお客さんと寄席つむぎの読者さんにメッセージをお願いします。

文鹿師匠:ないな。

――え…?

文鹿師匠:寄席は形のないものやから、消えていくもんやねん。その時々を楽しんでもらえたら。

――なるほど。米紫師匠は?

米紫師匠:ここまで読んでもらえたら分かるやろうけど、「米紫はものすごく気を遣ってました」、かな(笑)。

――有難うございました!

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ふたりだからこそ出来た会

笑顔が素敵です

今回は桂米紫師匠と桂文鹿師匠に、「ふたりで200席」の話題を中心にうかがいました。2時間ほどお話をさせていただいたのですが、この記事では書ききれないほど多岐にわたるエピソードが飛び出してきました。そちらはまた別の機会に。

桂米紫師匠は1月28日に繁昌亭で独演会が、桂文鹿師匠は三遊亭遊雀師匠と喜楽館で2月18日で二人会が開催されます。こちらも要チェックです。

桂米紫独演会

日時:2023年1月28日(土)18時開演(17時半開場)

会場:天満天神繁昌亭

出演:桂米紫「胡椒のくやみ」「マニュアル通りにデートしてみた結果www」「らくだ」

桂鯛蔵/桂弥壱

料金:前売2500円、当日3000円

ご予約・お問い合わせ:米朝事務所 06-6365-8281(平日午前10時~午後6時受付)

遊雀・文鹿 二人会

日時:2023年2月18日(土)18時開演(17時半開場)

会場:神戸新開地喜楽館

出演:三遊亭遊雀、桂文鹿、桂源太

料金:3000円(全席指定)

ご予約・お問い合わせ:070-2673-1203(チケット専用ダイヤル)※10時~20時

mugeplan51@au.com

※喜楽館窓口でも購入出来ます