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【取材記事】第91回ヨセゲー「壽与世迎初席」レポート

三遊亭遊喜

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 2023年も、東京・神保町「らくごカフェ」から月に1回、落語芸術協会の真打ユニットが「ヨセゲー」をお届けします!

 今回は、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠、春風亭鯉枝師匠、そして寄席つむぎでもおなじみの神田春陽先生をお迎えしての新春興行です。

 「演目はお楽しみ」ということで、期待が高まります。満員御礼となった新春ヨセゲー。さて、いったいどんな会になったのでしょうか?

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前半は、新年らしく愉快な噺から

 新年最初のヨセゲーは、三遊亭遊喜師匠から!
 コロナ禍もあり、これまでは年末年始恒例だった楽しい会も減少気味。小遊三一門が揃って集まることもなくなってしまったのに、なぜか年明けから瀧川鯉昇師匠とはお酒を酌み交わす機会が多くて……、というお話から、『親子酒』を演じます。

 そういえば、遊喜師匠は昨年のヨセゲーで、「お酒はそんなに飲まない」けれど「すすめられたら、すすめられるまま飲んでしまう」とおっしゃっていました。

 お酒を飲むのが大好きな商家の親子。息子の酒癖が悪いことを心配した父親が、2人で断酒することをもちかけるのですが……。

 妻に出してもらったお酒を飲む父親は、気持ち良さそうな飲みっぷりと表情がとってもリアル。1本、また1本と飲み進むにつれ、めんどくさい酔っぱらいへと変貌していくさまに「いるいる、こういう人!」と思ってしまいます。酔っている人ほど「酔ってない!」と言うのは、きっと昔から変わらないのでしょうね。

 同じく約束を破ってお酒を飲んでしまった息子が帰宅。酔っぱらい方は親子でまったく違うのに、どことなく似ているように感じられる演じ分けが見事です。

 続いては、春風亭伝枝師匠です。
 1月は、寄席出演の傍ら歌舞伎に食虫植物の展示会に大相撲にと大忙しの伝枝師匠。そんなお話から、力士の登場する『大安売り』を演じます。

 大阪へ出かけていた力士。本場所の土俵に上がったというので成績を尋ねてみると……。

 相撲を愛する伝枝師匠だからこそ!ともいえる真に迫った相撲の表現は、目の前で本物の取り組みを見ているよう。
 ところが、次こそ初日が出るか!という期待をよそに力士は負けてばかり。その理由の堂々とした言いっぷりは、なんだかこちらが悪いような気持ちになる清々しさです。笑

 続いて、神田春陽先生の登場です。
 講談で語られることの多いテーマのひとつ、「赤穂義士伝」。今回は『安兵衛駆け付け』のアナザーサイドともいえる『安兵衛婿入り』です。中山安兵衛が高田馬場での決闘へ助太刀に駆け付け、叔父の仇を討つさまを、その場に居合わせた堀部弥兵衛の妻の視点から描きます。

 同じ情景を描いた話でも、語りの視点が変わることによって、こちらが見えるものも変わるのが不思議です。

 芝居なぞ女子供が見ても意味はない、と夫に言われていたにも関わらず、講釈師顔負けの腕前で決闘の様子を語る妻。ここぞというところでの「お時間です」には、客席から思わず「もうちょっと!」の拍手が!らくごカフェという現実と、講談の世界というフィクションがリンクした瞬間でした。

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後半は、あの新作落語から1月にふさわしい人情噺まで

 仲入り後は、春風亭鯉枝師匠から。

 昨年12月のヨセゲーで途中まで聴くことのできた新作落語『地球レポート』。

 国分寺・ギー寄席や新宿・道楽亭での高座を経て、新春ヨセゲーにて待望の完全版を聴くことが叶いました!先月から次の機会を楽しみにされていたお客様も多かった様子で、一気に会場が盛り上がります。

 『地球レポート』は、「宇宙人から見た地球人」がテーマの新作。鯉枝師匠らしい、風刺のきいた語り口で演じます。現代の地球人を見聞した宇宙人のレポートは、耳の痛いことばかり。笑うに笑えない、客席の地球人たちです。笑
 先月聴いたものへさらに加わった要素もあり、今後ますます練り上げられていくのでは……?と楽しみになりました。

 トリを務めるのは、笑福亭里光師匠です。
 先月のヨセゲーを、新型コロナウイルス感染症の療養期間直後だったため、大事をとって休演なさった里光師匠(ツイキャスのコメントにて参加)。「仕事に行っても良いが、人の多い場所には行かない方が良い」という微妙な時期ゆえの休演だったことをうかがい、お元気でまたお会いできたことに感謝しました。

 里光師匠が演じたのは、『蜆売り』。大阪のお祭り・十日戎の日が舞台となった、1月ならではの人情噺です。
 らくごカフェが、これまでのあたたかな空気から一変。雪の降る、しんしんと冷えた夜の静けさが広がります。
 里光師匠の語り口からは、その場所の空気や温度、湿度までこちらに伝わってくるのがいつも心地よく、不思議です。今回もその世界にぐいぐい引き込まれました。

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おわりに

 1月も半ばを過ぎ、お正月気分も少し抜けてきた21日。寄席も「下席」が始まり、何となく「いつも通り」が戻ってきたつもりでいましたが、ヨセゲーで一気にお正月気分がよみがえりました。
 新年のうきうきした気持ちとしゃきっとした気持ちを取り戻し、「また頑張ろう!」と思える2時間でした。

 第91回ヨセゲー「壽与世迎初席」は、2月4日(土)までツイキャスでもご覧いただけます。
 次回・第92回ヨセゲーは「暖まりたい噺」。暦の上では春となった2月16日の開催です。少しずつ冬の終わりも見えてくるころですが、まだまだ寒さは厳しいはず。いったい、どんな噺で暖めてくださるのでしょうか。
 ぜひ、ご一緒に味わいませんか?

ヨセゲー#92【暖まりたい噺】
2023年2月16日(木)
開場:18:30 開演:19:00
当日:2000円 前売:1800円 ツイキャス配信:1500円
会場:らくごカフェ(東京都千代田区神田神保町2丁目3−5)
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/203246

ツイキャス落語会 ヨセゲー#91【壽与世迎初席】
https://twitcasting.tv/c:yosege/shopcart/203239
2月4日(土)までご覧になれます。

 寄席つむぎでは、三遊亭遊喜師匠、春風亭伝枝師匠、笑福亭里光師匠のお3方のコラムや動画がご覧いただけます。併せてお楽しみください。

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