読書家の笑福亭羽光師匠。そんな羽光師匠が小説から発想を得て新作落語を作る、そんなイベントが開催されます。8月29日に開催されます。第2回はポール・オースター『幽霊たち』から着想された落語の予定です。
楽しい催しを計画している最中、ポール・オースターが4月30日に他界。羽光師匠はこの「死」に何を思われたのでしょうか。じっくりお読みください。
ポールオースターが亡くなった
先日、アメリカの小説家ポール・オースター氏が亡くなった。
僕も50歳になって新しい作家を好きにならないのだが、【幽霊たち】をはじめ、ニューヨーク三部作を読んで、そのおしゃれな文体にはまった。口で説明しにくいが、カフカや安倍公房を好きな人ならきっとオースターも好きだろうと思う。
僕は今まで小説を読むのは、ストーリーを楽しむためだった。奇想天外なストーリーに驚いたり、犯人を推理したり、少年たちの手に汗握る冒険にワクワクして、小説を楽しんできた。
オースターの小説は、ストーリーらしいストーリーはそんなに無い。不思議な日常の連続であったり、形而上学的な思考小説であったり、と粗筋を紹介しにくい。
ユーチューブ動画で、三分で世界文学の粗筋を紹介する内容の物がある。僕も知識を得る為に、よく鑑賞している。
やはり、そうではなく、小説とは文章を味わうものだということを、オースターから学んだ。
【ムーンパレス】という青春小説は、文章の一文一文が身に染みわたり、温かさが伝わってきて、読後、優しい気分になれる小説だった。
訃報を受けて、じんわりと悲しみが広がって来た。
小説を読むという行為は、その作家と二人で飲みに行くような感じがするものだ。小説を読む……という行為を通して、小説家の頭の中を覗ける。そして人生訓を受け取れるのだ。