笑福亭羽光師匠の日常エッセイ第43回です。今回は「食」を通じて人とのつながりについてつづっていただきました。コロナで大変な飲食業界に思いを馳せる笑福亭羽光師匠、何を思われたのでしょうか?
あなたはどう感じるでしょうか。お楽しみください。
国立演芸場で真打披露興行
9月上席、都内での最後の披露興行である国立演芸場での披露興行が始まった。
初日だけ新真打が4人出演し、それ以外は日程を分けて出演する。僕は合計3日出演した。
国立演芸場だけは、集客がどんなに悪くてもギャランティーが定額である。国から頂戴するので安心だ。思い返せば披露興行通して集客が一番の心配事であった。客が少なかったら、出演してもらう師匠方に悪いのだが、国立演芸場は定額であることは師匠方も周知の事実なので、安心である。
ネタは【拝啓15の君へ】【私小説落語~月の光編~】【土橋万歳】をそれぞれ口演した。
自分で弁当も差し入れた。茅ヶ崎の濱田屋という弁当屋に高校の同級生が務めているので、楽屋に弁当を出した。
ふと思う。コロナ期間が終わったら居酒屋や定食屋に客は帰って来るんだろうか?
家での飲酒が充実し、経済的だしホームパーティーなんかもよく開かれている。僕も自炊が楽しい。半額商品ばかり買うので一食500円位で贅沢ができる。
わざわざ外食する店は、決まっている。
上野や浅草で出番の後は、必ずJRで尾久駅まで行き、中華『珍来』に行く。昔落語会をずっとやってくれていたし幟も作ってくれた。低価でかなりうまい。
ふらっと入った店で昼食や夕食をとるのはなるべくやめようと思う。なんでもおいしい僕にとっては落語会やってくれてたり、やってくれる可能性のある店が良い店で、安くてうまくても関係性を築けないチェーン店は興味無い店だ。
これから無限に人と出会えるわけではないから、今まで出会った場所や人を大切にしようと改めて思った。