令和5年6月16日(金)に世田谷区祖師谷にある書店「BOOKSHOP TRAVELLER」で、笑福亭羽光師匠の落語会が開催されます。その名も「SFトラベラー」。主催は寄席つむぎでお馴染みになりつつある本屋しゃんです。
さて、どのような落語会になるのでしょうか。笑福亭羽光師匠が紹介してくださいました。
『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』『タイタンの妖女』の2作品でSFトラベラー開催 ネタバレあり
祖師谷大蔵の書店で落語会を開催する。
僕が既存のSF小説を2作品選んで、その作品にちなんだSF落語を口演するのだ。
地球の進化を描いた『46億の妄想』と、落語家の未来を描いた『偽者落語家』を口演予定。
両作品は、『タイタンの妖女』ヴォネガット著と、『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』ディック著から着想を得た。
両作品に対してネタバレありのトークも予定しているので、読み返した。
『タイタンの妖女』は、大学生の時、20代終わり、そして今回50歳で……と合計三回読み返した。
大学生の時は、意味が判らなかった。お笑いに尖っていた20代終わりで読んだ時は、皮肉なギャグとして内容を受け取った。そして今回人生の半分以上を過ぎた年齢に達し読み返すと、人生賛歌として読めた。
(以下ネタバレあり)
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『タイタンの妖女』に火星軍と地球軍の戦争シーンがある。火星軍は無残に地球軍に敗北する。この戦争はトラルファマドール星人に仕組まれた物だった。
今まで何も考えずに読んでいたこのシーンを読んだ時、思い当たった。
今のロシアとウクライナの戦争に当てはまらないだろうか。この戦争も裏で大きな意思がプーチンを操って戦争せずにはおられない状況を作ったのではないだろうか?
また今回の戦争だけでなく、本書が書かれた後、ベトナム戦争、湾岸戦争、をはじめ、アメリカが介入した戦争は多数ある。ほとんどの戦争は、表に出ていない大きな意思(力)によって仕組まれているように感じた。
大金持ちとして生まれた主人公コンスタントは、記憶を消され人生ボロボロになり、火星から水星、そしてタイタンに流浪させられ地球にたどりつく。
単行本で445P、タイタンで長年連れ添った妻を亡くした主人公は言う。
「……やっと気づいたんだよ。人生の目的は、どこの誰がそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っている誰かを愛する事だ、と」
ヴォネガット名言集で検索するとヒットする上記の台詞に涙した。
主人公コンスタントは、運命に翻弄されボロボロになった人に重なる。
東日本大震災もそうだろう。普通に続いていくと思っていた日常が、不条理に終わらされ、人生を変えられる。
コロナもそうだろう。店やってた人、将来に夢を持っていた人が、コロナによって、運命を変えられた。
事故や、事件に巻き込まれ、その後の人生の変更を余技なくされた人も同じだろう。
キリスト教的な思考法(僕が読み取っただけなので間違いかもしれないが)では、不幸が襲ってきたとき、それは神が与えた試練だから、何か意味があるのだ。……と考えるらしい。
でも、震災で家族をなくされた人にそんな事言えるだろうか。
上記の台詞は、容赦なく襲ってくる不幸に対面した際、わずかな、しかし、確実な希望を与えてくれていると思う。
襲ってくる不幸は、避けようがない。けど、誰かを愛そう。それが人生の意味だ。と。
不条理な不幸に見舞われ絶望している人は、もし結婚しているなら連れ合いを、独身なら親とか兄弟を、孤独なら身近な友人をとりあえず愛して親切にしてみよう。……そんな事でも人生の意味はあるんだ……と、ささやかな希望を教えてくれているように感じた。