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⑩土橋萬歳という上方落語~SFと童貞と落語:笑福亭羽光

笑福亭羽光

上方落語の『土橋萬歳どばしまんざい』をご存知でしょうか?上方歌舞伎『夏祭浪花鑑なつまつりなにわかがみ』の七段目にあたります。江戸中期に初演後、すぐ人気演目となったそうです。現在、落語の『土橋萬歳』は多く高座にかけられることがありませんが、今にも伝わっていることが大切ではないでしょうか。

今回は笑福亭羽光さんに『土橋萬歳』についてつづっていただきました。笑福亭羽光さんは『土橋萬歳』に何を感じているのでしょうか?お楽しみください!

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土橋萬歳という上方落語

僕が最も現代に普及したい上方落語の一つに『土橋萬歳』がある。

上方でもあまりやり手がなく米朝一門のネタというイメージである。僕は桂九雀師匠に稽古してもらった。

内容は、抑圧された番頭が若旦那に逆切れし、殺人を犯すという噺。僕はこの噺のテーマは衝動殺人だと思う。

一昔前、ニュースで「キレる若者」というワードがよく出てきた。高校生が急にキレて親を殺した事件だったと思う。そうこうしているうちに「キレる老人」というワードがニュースで聴かれるようになった。老々介護の現場なんかで老人が若い人にキレて殺したという事が多かったと記憶している。

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 『土橋萬歳』ではさしづめ「キレる番頭」といったところだろうか。抑圧の多い現在ではよくある事のようだ。僕も普段はマジメな番頭タイプなんで、いつかキレてしまうのではないか……と大変怖い。

いつもどこか自分を抑え込んでいるので。破壊衝動というか、破滅願望が常にあるのだ。

一度だけ酒を飲んでやらかしてしまった事がある。先輩に怒られ逆切れして怒鳴りつけたのだ。

タテ社会の落語家の世界で先輩にキレるのはご法度であるが、翌日謝ったら許してくれた。

 ストレスは昔も今も変わらずあった。『土橋萬歳』は、マジメになりすぎずに気を抜かねばならない事を落語という形式で僕らに教えてくれているのかもしれない。